「ミニバン=家族の車」という常識に抗い続ける人々がいる。便利さを捨ててでも「自分らしさ」を追求する、型破りなオーナーたち3名の情熱に追った。
「普通の会社員の身としてはキツいものがありますね…」
社会人7年目の「クルミ」さんは、4代目オデッセイをカスタムしている。彼女がカスタムにかけた費用は200万円弱。「普通の会社員の身としてはキツいものがありますね。実家暮らしなので、どうにか切り詰めつつやりくりしている感じです」と語る。
クルミさんがオデッセイを選んだ理由は、父親の影響だった。「高校生になったあたりから、父がオデッセイを本格的に弄りはじめて。それまでも車が好きなことは知っていましたが、『ここまでハマっていたんだ』と驚いたのを覚えています。そのうち、父の車に乗せてもらったり、イベントに一緒に行ったりするなかで、『やっぱりオデッセイってかっこいいな』と惹かれていったんです。それで20歳のとき、思い切って自分のオデッセイを買うことにして」
現在、実家の駐車場には2台のオデッセイが並んでいる。「近所の人に何か言われたりはしないんですけど、ちょっと気にはされているかもしれませんね」とクルミさんは笑う。
◆◆◆
一方、独身にもかかわらず、ファミリー層に人気の高いアルファードを大改造している「RYOTA」さんもいる。彼は建築系の職人として働きながら、趣味のカスタムに情熱を注ぐ。
「完全にデザイン重視で選んでいるので、スライドドアが便利とか、家族がいるからとか、そういうのは全然関係ないですね」
彼のアルファードは、シンプルなラインと派手なカラーのコントラストが特徴的。「純正バンパーのスムージング加工とか、『出すところは出す』というメリハリ感がテーマですね」と説明する。
カスタムの醍醐味について、RYOTAさんはこう語る。「イベントに出す以上はたくさんの人に見てほしいですし、賞を狙って『上を目指したい』って気持ちもありますね。それが仕事のモチベーションにもなりますし、あとはイベントのなかで車関係の仲間が増えていくのも魅力なんです」
日産・ラルゴを12年ぶりに復活させた「ベッキー」さん。ここ最近はタントのカスタムに夢中だったが、仲間からの誘いをきっかけに、20年以上前に購入したラルゴを蘇らせた。
「もう全国でもラルゴを弄っている人はほとんどいないでしょうし、若い子たちはもう、そもそもこの車の名前も知らないでしょうしね」と語る彼の復活劇には、深い思いが込められていた。
「ベッキー」さんは、離婚して別居中の子どもに、復活したラルゴを見せたいと考えている。「今は離婚して別々に暮らしているので、まだこれが動くようになったことは教えていないんです。でも、あの子もずっと車が好きで、以前はタントにしょっちゅう乗って喜んでいたので……。これからラルゴの内装を仕上げたら、ぜひ見せてやりたいなと思います」と、父親としての思いを語った。
◆◆◆
ミニバンカスタムの世界には、まだまだ知られざる情熱が隠されている。家族のための車というイメージを覆し、自己表現の手段として愛車を追求する彼らの姿は、車文化の新たな一面を示しているのかもしれない。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。





