効率を愛する時代のなかで、アナログな過去に共鳴する者たちがいる。タイパもコスパもかなぐり捨てて、車との対話にこだわるオーナーたちが「Nostalgic 2days 2025」に集まった。

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「自分で動かしている」という感覚がとても新鮮だった

「もう一瞬で惚れ込んでしまったんです。細いハンドルやシートの感触が、教習車と全然違って」

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夫は別ジャンルの車好きで、現在はトムスバージョンのアリストに乗っているのだとか

 1972年式の三菱・ミニカに乗る「らん」さんは、祖父から譲り受けた愛車について語る。40年前に中古で購入され、20年間眠っていたミニカを祖父が少しずつレストア。それを20歳の誕生日に譲り受けたという。

「動かしてみても、ハンドルは重いし大変なんですけど、『自分で動かしている』という感覚がとても新鮮だったんです」

現オーナーの祖父が購入して20年ほど車庫で眠らせていたが、定年退職を機にレストアを開始

 クーラーはなく、雨の日は水漏れし、冬場はサビ防止のためリフトアップで保管。そんな不便さがあっても、今の車にはない楽しさがあるという。そして、いずれは自分の1歳の娘にも乗せたいと考えている。「親子4世代にわたって維持できるよう、もうあと20年、頑張って乗っていけたらいいな」と語る姿には、単なる車に対する以上の愛着が感じられる。

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 AE86のカローラレビンに乗るヒロトさんは、物心ついた頃から憧れの存在だった86を、ようやく手に入れたと言う。

現在交際している彼女も車好きで、5代目クラウンを維持しているのだとか

17歳のときに160万円のトレノを見つけたものの、バイトの貯金とバイクを売ったお金を足しても足りず、泣きながら母親に土下座して「お金を貸してください!」と懇願。それでも「親からの融資はおりなくて、トレノはそのまま売れてしまった」と苦笑する。

1986年式のトヨタ・カローラレビン。AE86のなかでも、珍しい2ドアのGTグレードだ

 その後もシルビアやジムニーなど13台もの車を乗り継いだが、「自分にはやっぱり86しかないわ」と確信。今は86に加えて180SXも所有し、「毎月ヒイヒイ言いながら、質素なご飯ばっかり食べています」と経済的な苦労を明かしながらも、「どれだけキツくても維持していきたい」と決意を語る。

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 スズキの原付バイク「蘭」に乗るレイ・ランさんは、22歳で車の免許を取り、光岡自動車の「レイ」という車種に一目惚れしたことから乗り物趣味が始まった。

普段の仕事は学校給食の調理師。通勤には光岡のレイを使っているので、駐車場ではかなり目立っているようだ

 自身の「蘭」について、「昭和な見た目がすごく気に入って、一文字の名前も素敵だなって」と語る彼女。最初はデザインと名前に惹かれて選んだバイクだが、「乗ってみるとフィーリングがすごくよくて。昭和の乗り物感というか、体にしっくりくる感じがある」と魅力を説明する。

1983年から1990年にかけて生産されたスズキ・蘭

 給食調理師として働きながら、レトロな乗り物を維持しているレイ・ランさんは「今はもう新しい普通の車に乗ろうとは思いません」と断言する。

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 彼らが共通して語るのは、現代の効率重視な価値観では測れない魅力だ。操作の難しさや維持の大変さすら、車との対話を楽しむための要素に変わる。そこには数値では表せない、アナログな喜びがたしかにある。

次の記事に続く 頭金はほとんど用意できていなかったけど勢いで購入、改造費だけで700万円、成り上がった証をアピールしたい……車にヤバい情熱を注ぐカスタムオーナーの“実像”

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。