〈こう語るのは、米カリフォルニア大学サンディエゴ校教授で、日本企業研究を専門とするウリケ・シェーデ氏だ。
9年以上の日本在住経験があり、一橋大学経済研究所、日本銀行などで研究員・客員教授を歴任。著書 The Business Reinvention of Japan(邦訳『再興 THE KAISHA』)は、大平正芳記念賞を受賞。本書のエッセンスを一般向けにまとめた『シン・日本の経営――悲観バイアスを排す』は広く話題になっている。〉
米国基準の悲観論
私から見ると、「日本はダメだ」という悲観論は、米国で経済学を勉強した日本人が「アメリカ人目線」でつくった物語(ストーリー)にすぎません。経済や市場や企業のあり方に関して、すべて米国を“基準”にした特殊な見方なのです。
2000年代前半のある時点で、日米のエコノミストは、1990年代半ばから2000年代初めまでを「失われた」時代とみなすようになりました。GDPなどマクロ経済データを見て、日本経済が失速しているとして、個人消費を再活性化させる政策が講じられていない、と批判したのです。しかしこの評価は、「GDPの規模と成長率」こそが「国力」を示す最重要な指標だとする考え方、とくに米国の経済学者の特殊な考え方を反映したものにすぎません。
日本は「遅れている」と考える人々は、たとえばシリコンバレーと比較してそう言うのですが、リンゴとオレンジを比較して優劣を決めるようなものです。
これは「良い悪い」の問題ではなく、その国の「文化の選択」の問題です。大量解雇を平然と行うイーロン・マスクのような存在は、いくら有能であっても、日本では受け入れられないのです。(通訳=近藤奈香)
※本記事の全文(約7500字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(ウリケ・シェーデ「BtoBダントツの日本企業」)。全文では下記の内容をお読みいただけます。
・米国基準の悲観論
・「スピード」より「安定」を選択
・「経済複雑性」ランキング
・日本は化学分野でなぜ強い?
・「安全第一」の日本の消費者
