野球をこよなく愛し、巨人ひと筋の糸井さん、神宮でビールの売り子をしていた入江さん、野球のことを書きつづけるプロ野球死亡遊戯さん。文庫「プロ野球死亡遊戯」出版を記念して、3人がちょっとゆるめに、ときどき熱く語ったプロ野球とビール売りのあれこれ。(全2回の2回目・前編より続く)
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中溝 いつ頃、入江さんはビールを売っていたんですか。
入江 はい、2014年は神宮球場でビールを売ってました。大学2年生のときです。もしかしたら、どこかで(笑)。
中溝 売り子さんはみんな汗だくで、しかも膝にサポーターとかをして頑張ってて。
入江 跪くと膝が黒くなっちゃうので、すごく悩んでました。
中溝 あのサポーターは自分で用意を?
入江 全部自前ですね。提供されるのは制服と靴下だけなので、頭に差すお花やタオル、サポーターとかは全部自分で。
中溝 売っているゾーンは内野席、それとも外野席?
入江 私は外野でした。宴会をしている団体客がつかみやすかったのと、あとは樽の入れ替えをする場所が外野席に近くて効率的だったので。
糸井 ピットインしやすいんだ。
入江 内野まで行くと、歩いているうちに泡が出来ちゃって、注ぐときに泡だらけになってしまうんですね。なので、歩く距離を出来るだけ少なくして。
1試合で403杯売りました
中溝 内野で売る子というのは、すでに固定客がついているんですか。
入江 という人もいます。私の感覚だと、最初に新人で入ってくると皆、外野でやるんですよ。そしてここじゃ戦えないとだんだん悟って、それで内野に流れていく、というパターンが多かったですね。結構、激戦区だったので。
糸井 それはどの球場もそうなのかな。
入江 聞く話ですと、自分のポジションが決まっている球場もあるようです。
中溝 1日にいちばん多くて、どのくらい出るもんなんですか。
入江 私の場合、いちばん多いときに1試合で403杯。だいたい試合開始の1時間くらい前から売り始めて、9回表まで売っているんですが、休みなしでした。
糸井 それはすごいね。