近年、空き家問題を解消する目的で、戸建て住宅の賃貸物件が増えているという。東京都では「空き家施策実施方針」を策定するなどして、「空き家活用」を推進しているようだ。だが、集合住宅とは異なる性質ゆえに思わぬトラブルも起きている。
一度入居すると長く住む傾向がある「戸建て」
約100戸の不動産を所有している不動産投資家の「たまっち」氏も、複数の戸建て賃貸物件を所有しているそう。たまっち氏は、戸建て賃貸の傾向についてこう話す。
「基本的に戸建て賃貸の人気は高いです。ただ、私が所有しているのは、築30~40年の戸建てが多く、古い物件はやや人気が下がります。古い物件だと設備も古かったり、階段も急だったりと快適な住み心地ではないことも多いからです。とはいえ、戸建て賃貸に住む方は、一度入居すると長く住む傾向があります」
たまっち氏によれば、平均で3年ほど、長いと10年は住む人がいるそうだ。また、戸建て賃貸を選ぶ人には、次のような特徴もあるという。
「やはりアパートやマンションなどの集合住宅が苦手だと感じている人が多いです。他人と壁を接していたり、共用部があったりするのが苦手だと。あとは、買う余裕はないけど、戸建てには住みたいという方からのニーズがありますね。一軒家を買うことがステータスだった時代もありましたが、それができないまま50代、60代になっている方もいる。戸建てを借りる方たちの年収は同世代と比べると、やはり低いと思います」
貸していた物件が全焼、さらに不運は重なって…
そんな経済的な状況ゆえに遭遇したトラブルもあったという。たまっち氏が所有する戸建て物件のひとつに、40代の女性が一人暮らしをしていた。その物件がある日、火災で全焼してしまったのだ。
「色々、理由を聞いていくと実はその女性ではなく、彼女のお兄さんが住んでいたみたいなんです。しかしお兄さんは電気代が払えなくなって、電気を止められ、ろうそくで生活していたそうです。寝るときにろうそくを消し忘れて、倒れてしまい、燃えたということでした。古い戸建て住宅は木造も多いので、結構燃えやすいんですよ」
また、全焼に輪をかけるように、不運が重なる。
「その物件は所有したばかりだったので、私も入居者も火災保険に入っていなかったんです。私のミスなんですが、それで処分費用や解体費用など700万円ほどを全額負担しなければならなくなりました。入居者に請求したんですが、当然払えないとなり、私が立て替えたというわけです。現在では弁護士を介して、毎月、返済をしてもらう約束にはなりましたが、損失は大きいですよ。場所にもよりますが、戸建ての場合は、家がなくなれば土地の価値はほとんどゼロになることも多いですからね」
