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森慎二氏の一周忌 ライオンズ戦士それぞれの思い

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/07/06
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「そこにいて当たり前すぎて、逆に、憶えてないんです」

 それでも、初めて会った日のことは、よく憶えているという。正式にコーチ就任する前の年、2014年秋のフェニックスリーグ。自身がキャリアハイの47試合登板を記録した年だった。「正直、会うまでは怖いイメージがあったけれど、最初から本当に優しかった。それに、共通の知人がいて、その方が、慎二さんに『あいつは、ちゃんとやれるメンタルがある』と言ってくれてたみたいで、常にちゃんと見て、信用してくれていたと思います。だから、野球に関しては、特に何かをじっくり教えてもらったり、深い話をしたりした思い出が、本当にないんです。野球以外でも、とにかくただただ兄貴みたいに接していて、くだらない話や冗談ばっかりでした。本当に本当に、泣ける思い出話がないんですよ」。

 でもね。と、最後にさらりと付け足した。「これを聞いてよかったな、と、パッと思いつくものはないですけど、心からリスペクトしていましたよ。だって、嫌いな人に対しては、『ここが嫌い』というのがあるから、印象や思い出として憶えてるじゃないですか。でも、慎二さんは良い人だし、大好きだから、ずっと一緒にいた。だから、そこにいて当たり前すぎて、逆に、憶えてないんですよ。だから、エピソードとかじゃないんです」。

 尊敬し、慕っているからこそ、自然と一緒にいる。“特別”ではなく、身近にいるのが、ごくごく当然のような存在だったのだ。だからこそ、今でもなお、武隈投手の心の中から“慎二さん”が消え去ることはない。

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「恥ずかしい戦いは、見せられないよね」と、相棒のような信頼関係にあった土肥コーチ。現在、チームは、ここ数年絶対的な抑えを任されてきた増田達至投手も7月5日に再調整のため出場選手登録を外れるなど、リリーフ陣の不安定さが大きな課題とされている。

 だが、自分のためだけではなく、「慎二さんのためにも」。そう、真摯に思ってマウンドに立つ男気ある中継ぎ投手が、ライオンズには何人もいる。

「優勝したい」。42歳の若さで、志半ばで旅立った森コーチの遺志を果たすためにも、ブルペン陣は必ずや再建し、大奮闘を見せてくれると信じている。

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