2007年、結婚を機に千葉県香取市へ移住した佐藤藍子さん。それから、大自然の中で動物に囲まれた「田舎暮らし」が始まった。
元“都会っ子”だという佐藤さんがまったく異なる環境に飛び込み、馴染んできた17年間には、移住や二拠点生活を考える現代人への示唆に富んだ知恵が詰まっている。ライターの我妻弘崇氏が詳しく話を聞いた。
田舎移住に「選択の余地はなかった(笑)」
全てのきっかけは、競馬関連の仕事をしていた佐藤さんが「引退馬の行く末」について知りたいと思ったことだった。調べる中で香取市の乗馬クラブと出会い、「引退馬のことを聞きたい」と現地まで足を運んだ。そこでインストラクターとして知り合ったのが現在のパートナーだという。
「結婚を考える前までは、まったく移住のことは考えていなかったですね。夫の仕事は、家族での乗馬クラブ経営――東京ドーム1個分くらいの敷地が広がっているので、夫が私に合わせることはできません。馬がいますから、すぐそばにいないとできない仕事がたくさんあります。いろいろ考えると、やっぱり私がそこに住むしかない。大げさに言うと選択の余地はなかった(笑)」
結婚を機に移住することを決めたのは、佐藤さんが30歳のときだ。かつては『ALWAYS 三丁目の夕日』の舞台のようだったという地元・川崎市幸区とも違い、自然豊かな千葉県香取市での暮らしには、当初驚くこともあったそう。特に印象に残っているのはゴミ捨てについてだ。
「それまではマンション暮らしでしたから、ゴミを持ってエレベーターに乗って、置き場にポンって置くだけ。ところが、香取市で暮らしてみると、ゴミ捨て場が遠くて……。お義母さんに尋ねると、『車で持っていかないと無理よ』と言われて、『ええぇ!』って」
人によっては「田舎暮らし」にウンザリしてしまいそうな場面だが、佐藤さんは違った。
「そうした経験をすることで、いかに自分が便利な場所にいたかが分かったし、田舎であってもそうした暮らしを支えている方々がいるからこそ、自分たちの生活が成り立っていることを再確認する社会勉強になりました。利便性が良いと、それが当たり前になって何かを見落としがちになるんだなって」
地域との関わり方は「グイグイいかない」
移住を考える人にとって特に気になるのは、その土地にもともと住んでいる人々との関わり方だろう。佐藤さんはタレントという職業であることから、自身も「派手な世界のお嫁さんが来たと思われても不思議ではない」と語るように、より一層の配慮が必要だったのではないだろうか。どのようにしていたのか。
「グイグイいかないことかな。内向的な方もいらっしゃいますから、お掃除してるときや外出時など、顔を合わせる機会のときにこちらから会釈をするなど、徐々に距離感を掴むようにしました。私自身がどちらかというと内向的な人間なので、無理に装って、『よろしくお願いします!』みたいなテンションで接してもバレてしまうと思ったんですね」
さらに、新しい環境では、ないものを求めすぎないことも大切だと佐藤さんは語る。
「わがままは言えないですよね。人間がその土地にいる以上、無理な話だってあります。ないものはないんだから(笑)。『なんでこれがないの?』と文句を言う前に、理由を探しなさいって思います。自然豊かな場所でのんびりしたいけど、それなりに美味しいお店もほしい……そう思っても、実際にそんなお店がないのなら、理由があるわけですよね」
移住から17年を経た佐藤さんの考え方には説得力がある。「行動すれば、案外、楽しいことは探せるもの」という言葉に、背中を押される人も多いのではないだろうか。
写真=本人提供
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佐藤さんによる「移住をする前に確認しておきたいこと」のアドバイスや、実家を手放して田舎移住する両親との向き合い方など、さらに詳しいインタビューの全文は、
#1『「敷地は東京ドーム1個分くらい」30歳で結婚後、夫の実家に移り住むことに…佐藤藍子が明かす、“田舎暮らし”を始めるまでの戸惑いと覚悟』
#2『「ゴミ捨て場が遠すぎて、車で持っていかないと無理」大自然の中で馬と暮らして17年…元“都会っ子”の佐藤藍子が明かす「田舎移住のリアル」』
#3『両親が築30年の持ち家を手放し、神奈川県川崎市→茨城県に移住することに…「子どもにとっては衝撃的」佐藤藍子(47)が語る“実家の片付け”体験』
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