2007年、結婚を機に千葉県香取市へ移住した佐藤藍子さん。嫁いだ先は、自然が広がる乗馬クラブを営む牧場。都会っ子から一転、動物たちに囲まれる田舎暮らしが始まった。

 それからほどなくして、生家の片づけをすることになった。両親が、新しい場所である茨城県で暮らすことを決断したからだ。両親も慣れ親しんだ場所を離れる――。

 親が大きな決断をするとき、子どもはどのように接すればいいのだろうか。思い出はどうしたらいいのだろうか。生家を片付ける。その胸中を振り返ってもらった。(全3回の3回目/最初から読む

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佐藤藍子さんと愛犬のちめんくん

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両親の希望で川崎市にあった実家を整理した

――先ほど、佐藤さんは川崎市幸区で生まれ育ったとお話されていました。移住だけではなく、実家の整理も済まされているんですよね?

佐藤藍子さん(以下、佐藤) ですね。私が結婚して数年後に実家を整理しているので、かれこれ10年以上前になるのかな。

――どうして生まれ育った実家の片付けをすることになったのですか?

佐藤 両親の希望でした。父と母は、南武線沿線の町に暮らしていて、家も駅から5分ほど。とても住みやすい場所で、気に入っていました。昔ながらの商店街も残っていて、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の舞台のような場所で、私も好きでした。ですが、実家に帰るたびにどんどん町の様子が様変わりしていって、川崎も武蔵小杉も家賃が上昇していくようになると、それ以外の場所にどんどん人が流入するように。両親は昔ながらの時間の流れが変わってしまい、知らない人が増えたと漏らしていました。

 当時、実家は築30年くらい経っていたので、両親は建て替えも検討していたのですが、シミュレーションしてみると、新しいお家を建てたとしても、そこで暮らすとなると物価も高く、果たしてここでいいのかと考えたみたいで。私とも相談した結果、思い切って引っ越そうとなったんですね。