――佐藤さんが移住を決断されたように、ご両親も相当な決断をされたんですね。
佐藤 親としては、子どもに迷惑をかけたくないということで、ここに住み続けると面倒だろうと思ったみたいです。住み慣れた街を離れるわけですから、相当な覚悟があったと思います。それで、母親のルーツがある、茨城県某市に引っ越すことを決めたのですが、普通、逆じゃないですか? 田舎に住んでいる親が高齢を機に、便利なところに住むというのがよく聞く話ですよね。でも、その場所には母の親戚もいるので、知らない場所ではないし、家族間の連携もあるからって。たしかに、おじいちゃん、おばあちゃんが生まれ育った場所なので、私としてもなじみがある。新しい家は、駅から歩いて10分くらいで、周りに公的施設もあるので、両親の意見を尊重しました。
――佐藤さんが暮らす香取市という選択は?
佐藤 それも話し合ったのですが、車に乗らなくてはならないですし、歳とともに運転することも難しくなるだろうから現実的ではないって。土地勘のある親戚も周りにいるのだから、茨城県の方がいいということで、意外とすんなり両親は決めましたね。
「とりあえず持っていこう」だとモノは減らない
――それに伴い、佐藤さんが生まれ育った生家を片付けることに。たくさん思い出が詰まっていると思います。
佐藤 両親はきちっとした生活をしていたので、「自分たちの物は自分たちでやっているけど、あなたの物はどれを捨てていいか分からない。いっぱいあるから、どうにかしなさい」という電話がたくさん来て(笑)。ですから、私が親に、「これいるの? いらないの?」と聞くようなことはまったくなかったです。両親も、これを機に自分たちがいらないものを整理する機会だと割り切っていたみたいです。ただ、捨てるとなるとやっぱり心は痛みます。かと言って、「とりあえず持っていこう」だとモノは減らない。
そこで、新生活に必要か必要じゃないかという視点で取捨選択をしたようです。新しい生活をスタートするわけですから、それを楽しみにしたほうがいい。家が違うんだから、今までの生活とは違う。土地が違うんだから気候だって違います。今までの生活を、そのまま新しい先に引き継ぐとマイナスになることが多いんですよね。
