2007年、結婚を機に千葉県香取市へ移住した佐藤藍子さん。嫁いだ先は、自然が広がる乗馬クラブを営む牧場。都会っ子から一転、動物たちに囲まれる田舎暮らしが始まった。

 昨今、移住や2拠点生活にあこがれる者が少なくない。だが、新しい場所になじめず、「こんなはずじゃなかった」と肩を落とす人もいる。

 香取市に暮らして約17年、まだ移住という言葉が一般的ではなかった時代に、新しい場所で新しい暮らしを始めた佐藤さんに、移住するうえでの心得を聞いた。(全3回の2回目を読む/続きを読む

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ジャガイモ収穫中の佐藤藍子さん

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ゴミ捨ては「車で持っていかないと無理よ」

――今では慣れたと思うのですが、2007年の移住当初、苦労されたことを挙げるとしたら何でしょうか?

佐藤藍子さん(以下、佐藤) ゴミ捨ては、勝手が違ったので驚きました。それまではマンション暮らしでしたから、ゴミを持ってエレベーターに乗って、置き場にポンって置くだけ。ところが、香取市で暮らしてみると、ゴミ捨て場が遠くて……。お義母さんに尋ねると、「車で持っていかないと無理よ」と言われて、「ええぇ!」って。家は、馬たちの牧場があるような広大な場所にあるので、歩いて捨てに行くには遠すぎると。車に生ゴミを乗せることに、最初は抵抗があったのですが、臭い対策などをして「もうしょうがない!」と割り切ることにしました(笑)。

広大な敷地で自然と動物たちに囲まれて暮らす佐藤藍子さん

 ただ、そうした経験をすることで、いかに自分が便利な場所にいたかが分かったし、田舎であってもそうした暮らしを支えている方々がいるからこそ、自分たちの生活が成り立っていることを再確認する社会勉強になりました。利便性が良いと、それが当たり前になって何かを見落としがちになるんだなって。個人主義になりがちになるというか。ですから、ゴミを一つ出すにしても、こうしたほうがいいだろうなという配慮の気持ちが、ここに来てからはより生まれましたね。