――誰も分からないくらい普通に(笑)。

佐藤 水面にチャポンと音を立てて入っていくのではなく、音を立てずに自然にスッて入っていく感じです(笑)。何かしたいとか、こういう人間ですといったことを過度に伝えると、大げさに言えばエゴに映ってしまう。それって、新しいコミュニティーに入っていくことを考えると違うんじゃないかなって思うんですね。

「青い鳥がいない」のは、理由がある

――以前、私が取材した移住者は、「青い鳥を探さないこと」も大事だと話していました。あれもこれも求めると、いつまで経っても満足できない。佐藤さんもそう思いますか?

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佐藤 わがままは言えないですよね。人間がその土地にいる以上、無理な話だってあります。ないものはないんだから(笑)。どうしてそこにそのお店があるのか、なぜそこにそのお店がないのかは、理由があるんですよ。都会でもあるじゃないですか? あの立地に構えるお店って、決まって新しいお店になっちゃうねとか。それだって理由があるんですよね。

 ですから、「なんでこれがないの?」と文句を言う前に、理由を探しなさいって思います。自然豊かな場所でのんびりしたいけど、それなりに美味しいお店もほしい……そう思っても、実際にそんなお店がないのなら、理由があるわけですよね。

自然に囲まれた佐藤さんの暮らし。馬小屋の向こうに月が見える

――理由があるから青い鳥はいない(笑)。納得です。30歳から17年間、香取市で暮らしています。都会の生活から長く離れている佐藤さんから見た東京や都会は、どのように映るものですか?

佐藤 便利だし、人のエネルギーもある……だけど、ここ何年かは、人のつながりみたいなものがどんどん薄くなっているような気がしますね。働かなければいけない一方で、人生は有限ですから楽しんだりリラックスしたり、心身の心地良さも大事なはず。都会だけでは、やっぱり閉塞感があるのではないかなとは思います。