移住は“四季の表情”を見てから決めた方がいい
――昨今、移住や2拠点生活といった言葉が叫ばれ、あこがれる人が増えている背景には、そうした要因もあると思います。あらためて、佐藤さんからアドバイスを送るなら、どんな視点を持つことが移住するうえで大事だと思われますか?
佐藤 日本は四季がありますから、希望する行き先の1年間、四季の表情を見てから決めた方がいいと思います。私は1年間通う中で、今の場所がいいと思ったから、結婚してもここで暮らしたいと思えた。移住をするとなると、お金も時間も取り戻せない部分が生じますから、「どんな感じだろう?」って頭を想像させながら香取に通った1年間でもあったんですね。何回も足を運ぶことが大切。
例えば、長野県に移住しようと思っているなら、春夏秋冬を体験した方がいい。「こんなに寒くて、雪がたくさん降るとは思っていなかった」と思うのは、その地域の冬の表情を知らなかったからですよね。生活するって、その地域のことを知ること。春夏秋冬、滞在をしてみて、なるべくそこに住んでいる人のお話を聞いてみる、暮らしを体験することが欠かせない。
――想像しないと、ライフはもちろん、ワークだって分からない。双方が見えないと、そのバランスやブレンドをどうしたらいいか分からないですよね。
佐藤 旅行じゃないですからね(笑)。旅行だったら3日後に帰れるかもしれないけど、生活は毎日、毎年、5年、10年と続いていく。想像するから、「ここでこんなことが出来そう」とか「こういう生活環境になるだろうな」と分かってくる。私は、川崎市幸区というザ・ベッドタウンみたいな場所で生まれ育った後、東京で一人暮らしを始めました。都会っ子で、それこそ歩いて行ける距離に何でもあったので、実家には車もなかったくらいでした。今と真逆の生活を30年弱してきたんですよね。
それが29歳から30歳の1年間で、馬たちとの出会い、自然との出会いがあって、いい意味でカルチャーショックを受けました。虫を見て、「ひぃ!」って怖がっていた私が、今では虫なんて大したことないって思っている。自分でもびっくりするくらい環境が変わりましたけど、楽しめているのはその場所に通って、想像し続けたから。暮らしを変えるって、相当大変なことなんだぞって思います。
写真=本人提供
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