2007年、結婚を機に千葉県香取市へ移住した佐藤藍子さん。そのきっかけは、引退馬の余生を知りたいと思ったことだった。
嫁いだ先は、自然が広がる乗馬クラブを営む牧場。都会っ子から一転、動物たちに囲まれる田舎暮らしが始まった。
まるで違う生活に、どのように順応し、溶け込んだのか。移住のヒントを探った。(全3回の1回目/続きを読む)
◆◆◆
移住のきっかけは引退馬の“その後”が気になったこと
――乗馬を通して出会った、乗馬インストラクターの旦那さんと2007年に結婚され、それを機に、乗馬クラブのある千葉県香取市に移住されます。あらためて、経緯を教えてください。
佐藤藍子さん(以下、佐藤) 競馬のお仕事をしていたときに、競走馬が自分たちの仕事を終えた後はどうなっているのか気になったんですね。調べていくと、どうしても処分されてしまう馬がいることを知りました。当時、引退馬協会の前身である「軽種馬フォスターペアレントの会」という小さな会があり、その拠点となる事務所の登録地が、香取市にあった乗馬クラブでした。お話を聞いてみたいと思って、プライベートで足を運ぶことにしたんです。
――その流れで、「せっかくだから乗馬もしてみないか」と?
佐藤 はい。「体験乗馬したい」という理由で伺ったわけではなく、「すみません、引退馬のことで……」というのは珍しいケースだったようで(笑)。実際に乗らせていただいた馬も、たまたま元競走馬でした。私としては、「颯爽と走っていた馬でしょ? 今は違うと言われても、乗れるの!?」なんて思っていたのですが、いざ乗ってみたら本当に優しくておとなしくて。競走馬とはまったく違うイメージを持ちました。
ド素人の私が乗っても、純朴にお仕事をこなしてくれることに感動して、伺ったその日に、引退馬を支援する会と乗馬クラブの会員にもなってしまったんですよね。もっと乗馬をやってみたいという気持ちも生まれて。何度も通ううちに、馬のために自分ができることも分かってきて、楽しくなってきました。そのとき、いろいろと教えてくれたのが今の夫なんですね。

