――なるほど。たしかに、同じ行程でも「苦行」と取るか「珍道中」と取るか、解釈次第でまったく違います。
佐藤 そう思います。会社から近いところに家があっても、2時間くらいダラッとしてしまうことだってあるじゃないですか。逆に、遠いところから電車で通うとなったとき、その間を読書に充てるなど、豊かな時間に変えることもできる。電車の中や車の中などは、普段、家の中にいるときとは違う空間ですから、刺激になりますよね。大人になって環境を変えるって大変なことだと思うのですが、強制的にそういう時間や環境があるって、実はラッキーなことでもあると思うんです。私自身、今でもそういう場面に遭遇すると、不安を感じつつもやってみたら楽しいこともあるだろうなって気持ちでチャレンジしたりしていますね。
「移り住む人間ですから」過度にアピールしないのが大切
――移住した当時は、「あの佐藤藍子!?」ではないですが、驚かれたりされませんでしたか?
佐藤 「わ~佐藤藍子だ!」といった反応の方もいれば、「別に芸能の仕事してるだけでしょう」という感覚の方もいますよね。それに、香取市は近くに、“北総の小江戸”と呼ばれる佐原というキレイな街並みがあって、ロケ慣れしていて、芸能人を見ても驚かないところがあります(笑)。私は移り住む人間ですから、もし自分が逆の立場だったら、新しく来る人に対して身構えると思うんです。そういう人がいるかもしれない中で、「私、ここ好きなんです!」みたいなことを言われても、「ああ、そうなんですね……」ってなるんじゃないかなって。
――移住を考えている人にはとても大切な姿勢だと思います。アピールって、元々そこに暮らしている人たちからすると結構重いというか。
佐藤 そうなんですよ。新しく移り住む人が好きな雰囲気や自然、町並みって、そこに暮らしてきた地元の人がコツコツ生活しながら築いてきたものですよね。それに対して過度にアピールすると戸惑いしかないと思います。 新しい仲間として迎え入れてくれたらうれしいという気持ちはあっても、一方通行になってはいけないと思うんですよね。
写真=本人提供
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