――佐藤さん自身、香取市に移住しているから言葉に説得力があります。
佐藤 新しい生活って、体験していないから不透明な部分がどうしてもあります。幸い、母親も私と一緒で、「暮らしてから考えよう」という性格なので、新しい生活をしてから必要なものは買えばいいだろうという考え方でした。たしかに、生活は続いているんですけど、あまり地続きにしないほうがいいと思うんですね。新しい生活は新しい生活だと区切りをつけて、今までのモノや時間には感謝して、整理していった方がいいんじゃないかなって。ですから、むしろ私が家に残していたものを整理するのが一番大変でした。「藍子、まだか? まだか?」って言われて「すみません」って(笑)。
――実際、どれくらいの期間で実家の片付けをされたのですか?
佐藤 2か月はかからなかったと思います。両親は今の茨城県の家に、もう10年は住んでいるので、結局、モノは増えています。ただ、新しいものになるので、それはそれで新しい証しみたいなものなのかなって。新しい家は、前の家に比べると陽当たりなども含めて明るいので、それに伴い両親も精神的に若返ったように感じます。例えば、前の家は昔ながらの間取りだったので、台所は奥まった場所にあり、母は一人で料理を作るような感覚でした。一方、新しい家はカウンターキッチンのような作りになっているので、リビングを見ながら料理を作れるため、母が明るくなったように感じたんです。親戚も会いに来てくれるので、前よりも家族がつながっているなと感じます。子どもとしては安心ですよね。
――ついつい“どこに住むか”という場所に焦点が当たりがちですが、佐藤さんのお話を聞いていると、違う視点で考えることが大切だと分かりますね。
佐藤 便利といっても、みんなに当てはまるわけじゃない。引っ越しの行政の手続きなどは父が行ったのですが、「新しい町は充実してるなぁ」って話していました。コミュニティがしっかりしていて、市と市民に連携を感じるって。対して、今まで住んでいた町は人が増えたことで手続きも待たされるし、負担も大きくなっていくと心配していた。人が集中すると、どんなに便利であっても支障は生まれますよね。
