開幕から好調の西武打線が、シーズンの折り返しを迎えても衰えを見せない。普通、チーム打率は.250を基準に、それより高いか低いかで打撃面の強さが評価される。パ・リーグ6球団のチーム打率を見比べると、西武の数字が突出しているのが一目瞭然。選手個々も、自分の打率がチームの数字より上か下かを目安にし、意識しているのでレベルアップにもつながる。
ちょっとした裏話。一般的に打率を言葉に表す時、.250は「にわりごぶ」だが、野球界では「にひゃくごじゅう」と言う。なので、キャンプやオープン戦の時期にシーズンの目標を聞くと、「さんびゃく(3割)は打ちたいですね」などの答えが返ってくる。耳慣れればすんなり入るが、当初戸惑ったのはいうまでもない。
強力打線名は「獅子おどし打線」
打撃好調が続くと担当コーチもやりがいがある。もちろん、好投手の攻略は難しいものだが的確なアドバイスを選手に送り、それに応えてくれた時には喜びも増す。試合中、相手投手攻略のためにベンチ前で円陣を組むケースがある。投球の傾向から狙いダマを絞る指示が主だ。以前、土井正博打撃コーチ(現中日打撃コーチ)が、「いいか、こうして円陣を組んでいると、相手ピッチャーが『どんな指示がでているのか?』と考えるだろう。それが狙いだから、今回はなんもなし!」。要するに相手を惑わせる作戦。今も中日で、この作戦を使っているのだろうか。
西武のホームゲームの場合、数年前から取り入れている「回し打ち」の効果も出ているのかも知れない。通常の打撃練習は、5分~7分ケージ内でひたすら打ち続けるが、田辺徳雄前監督の「一人で持ち時間を打つより、数球打って交代したほうがいろいろ考えるでしょう。打席に入る前の心構えにもつながるので」とのアイデアからの練習方法。確かに、決められた時間内で打ち続けると「練習のための練習」といえなくもない。直接的な効果とは明言できないが、まったく無関係とはいえない。
さて、その西武の自慢の打線について、スポーツ紙がこぞってネーミングを活字にしていた。「山賊打線」、「獅子舞打線」等々。ただ、前者の場合、活字が目から入ってくるより、電波で耳から入ってくると、かなりの抵抗感があった。相手投手から身ぐるみをはがすように点を奪い取る、という意味からのようだが「さんぞく」は個人的に好まない言葉だ。
そして、そのネーミングの統一に一役買ったのが辻発彦監督。その名も「獅子おどし打線」。正確な漢字は「鹿威し」だが「獅子おどし」として最近のスポーツ紙をにぎわしている。ご承知のように、竹筒の水が一杯になると反転して「コーン!」と鳴る日本文化独特の装置だ。風情を感じ、耳から入る言葉の響きも心地よい。鳴った時に、竹の口が上向きになるのも「上昇」の意味を持つ。また、監督による命名なので、メディア側も使いやすいのも事実。