好きなバンドが一緒とか、好きな映画が同じとか、そういった嗜好が一致するともはやブラザーのように思えることもある。プロ野球で言えば御贔屓の球団が同じで推し選手が同じであれば特に親近感が湧くというものだ。
ホークスファンの根木村吉哉さん(48)はヤフオクドームの観戦時に必ず『TERAHARA20』のユニホームを着ている。それは寺原投手が2軍で調整している時でも1軍の試合に着てきている。
根木村さんが寺原を応援する理由
彼の隣に座って「ベンチ入りしていない時でもいつも寺原ですね。どんな魅力に惹かれているんですか?」と筆者が尋ねると、「父親が日向夏の生産者でね、宮崎出身って聞いただけで無条件に応援したくなるんよ。それからたまたま見に行った自主トレの時のテラ(寺原投手)の対応が素晴らしかったから熱烈応援にかえたんよ(笑)」と言った。
ただ、これだけでは根木村さんが寺原隼人ファンというだけであって集団になるとは思えない。ご当地選手だからとか、対応が良かったからファンになったとか、サインがもらえたから好きになったとかいうのは、筆者の誰よりも多いホークスファン取材の中で星の数ほど聞いてきた(笑)。
しかし、この集団寺原ファンの現象を取材していくと寺原投手が深く関わるエピソードがあったのである。
「奇跡を起こして」
実は去年、2017年5月6日、寺原投手の大ファンである根木村吉哉さんが脳出血により倒れ意識不明になっていた。その出来事はヤフオクドームのライトスタンドの常連客の連絡網により瞬く間に伝達されていた。
「ネッキーが脳出血で意識不明げな、もしかしたらこのまま目覚めない可能性もあるげな」と泣きながら男性ホークスファンが言う。面会謝絶の病棟で奥様の真理さんが必死に祈る。寺原投手のユニホームを胸に掛けた状態だ。
この状況は寺原投手にも伝わっていた。もちろん寺原投手からしてみれば顔と名前が一致するというわけではないはずだ。しかし自分の事をずっと応援してくれていた熱烈寺原ファンの命が消えそうになっているという事に“何かしたい”と思ったのだろう。彼は根木村さんに向けてのメッセージを練習着シャツに書き綴ってことづけた。
「ネッキーさん 奇跡を起こして。ドームで待ってます」
さらに寺原投手は「何もできないのが申し訳ないですけど」と言いながら動画撮影で肉声も収めてくれたのだ。