TBSは郷ひろみと二谷友里恵夫妻を司会に起用

 そして、1990年6月29日、結婚の儀が行われ、秋篠宮家が創設される。結婚当日は、テレビ各局がその様子を中継しており、たとえばNHKは朝のモーニングワイドから二人の様子を伝え、その後も賢所(かしこどころ)での結婚の儀の様子や天皇・皇后に会う朝見の儀、パレードの様子を生中継し、夜のニュースでも取りあげた。民放も各局ともにそれぞれ儀式の様子を生中継したほか、ワイドショーなどでも結婚の話題が中心となった。東京ではさらに、日本テレビ・TBS・フジテレビが夜の7時から2時間の特別番組を編成した。TBSは郷ひろみと二谷友里恵夫妻を司会に起用し、秋篠宮夫妻のエピソードを紹介しつつ、全国各地でのお祝いムードを中継する番組構成であった。後述するように、ワイドショーを中心としたメディアがこの時期の「開かれた皇室」を積極的に取りあげており、二人の結婚は、その格好の対象となった。「テレビの前も人だかり」という見出しの記事が掲載されたように、人々もパレードなど様々な儀式をリアルタイムで注目した。新聞も大きく報道、週刊誌も特集を組んで、様々なエピソードを紹介して二人の結婚を祝した。

秋篠宮さまの乱れた髪を紀子さまが直した写真が…

1990年6月29日、結婚の記念撮影の合間に、秋篠宮さまの髪を直される紀子さま ©共同通信社

ADVERTISEMENT

 ところがこの結婚をめぐって、宮内庁とメディアの間で対立が生じた。朝見の儀の後の記念撮影の合間に秋篠宮の乱れた髪を紀子妃が直した写真が撮影されたが、宮内庁はその公表取り消しを要請、しかし新聞各社は拒否し、翌日6月30日の各紙紙面に掲載する。形式的な写真ではなく「このニューカップルの睦まじさを自然な形でとらえた好感の持てるもの」とメディアは考え、掲載をしようとしたのに対して宮内庁が待ったをかけたのである。写真は大手新聞社などが加盟する東京写真記者協会から推薦を受けた宮内庁嘱託のカメラマンが撮影、「共同通信」を通じて加盟社に送られた。宮内庁はこれに対して、記念写真しか撮らないという約束が守られていないとして公表取り消しを要請したのである。ただし、撮影した「共同通信」の中山俊明カメラマンは、この写真は「むしろ結果としては皇室のアピールになっているし、読者も喜んでいる」として宮内庁の対応を批判、メディア各社も宮内庁からの要請を拒絶する。つまり、この写真は「開かれた皇室」に合致し、その姿を具体的に示したものであり、平成の天皇制のあり方からすれば当然掲載すべきと新聞メディアは考えたのである。ここで、宮内庁は旧態依然な考え方を有する「権威」であった。