6月27日、神奈川県座間市で男女9人を殺害したなどとして死刑が確定していた白石隆浩死刑囚(34)の死刑が執行された。白石死刑囚は2017年、座間市の自宅アパートで男女9人を相次いで殺害したなどとして強盗強制性交殺人などの罪に問われ、2021年に死刑が確定。

 被害者はSNSで自殺に関する投稿をした当時15~26歳の男女で、2017年8月からわずか2か月間で女性8人、男性1人が殺害された。

 この世間を震撼させた凶悪事件の加害者である白石死刑囚は一体どんな人物で、如何にして犯行に及んだのか——。ノンフィクションライターの小野一光氏が白石死刑囚と11回に渡って面会し、その対面記録を「週刊実話」(日本ジャーナル出版)で連載。当時の記事を再公開する。

ADVERTISEMENT

※本稿にはショッキングな表現が多出します。ご注意下さい。

(初出:2020年9月30日。年齢、肩書は当時のまま)

◆◆◆

白石被告 ©文藝春秋

 ◆◆◆

「最近、カップヌードル・ミニに七味(唐辛子)を入れて、辛いラーメンにして食べてるんですよ。ただ、お湯が支給される時間って決まってるので、待ちきれなくて、“水ヌードル”も始めました」

 7月22日の4回目の面会は、白石隆浩の“マイブーム”の話で始まった。彼は「食事がストレス解消なんです」と語る。

「昼とかに“当たり”があるんですよね。麺類が好きなんですけど、天ぷらそばとかが出ることがあるんですよ。自弁(個人で購入する弁当)にしちゃうと、それが潰れてしまう(食事が出ない)んで、もったいないんですよね」

 ちなみに、食事の他には絵を描いたり、写経をすることも、ストレス解消法だという。

「なにもしていないと、時間が経つのが遅いんです。絵とかに集中すると、時間がすぎるのが早いから…」

不思議なくらい、事件についての夢は見ない

 時間潰しの手段として睡眠を連想した私は、唐突に「夜に寝てて、夢とか見る?」と尋ねた。

「夢はめっちゃ見ますね。今朝見たのは、××(白石が社員だったスーパーマーケットチェーン)の総菜コーナーで、バイトをしてる夢でした。商品に値引きシールを貼ってるんです」

「事件についての夢とかは、見たりしないんだ」

「そうですね。不思議なくらい、事件についての夢は見ないですねえ」

 嘘をついたり、虚勢を張っている表情ではない。本当に見ていないのだろう。

 前回の面会終了の直前、白石は殺害した9人の遺体を部屋で保管した際の臭いについて、消臭方法を次回に話すと口にしていた。そこで私は話を持ち出す。