3年前、世間を震撼させた、神奈川県座間市のアパートで若い女性8人と男性1人の計9人の頭部遺体が見つかった事件。9月30日、強盗強制性交殺人や死体遺棄・損壊などの罪に問われた白石隆浩被告(29)の初公判が東京地裁立川支部で開かれた。

 法廷に現れた白石被告は、事件後に報道された“好青年風”の姿から様変わりしていた。髪は肩まで伸び、黒縁メガネ、白いマスクをつけていた。明るい緑色の作業服のような服装が奇妙だった。

白石被告 ©文藝春秋

 まず、裁判長が公判での注意事項を述べた。今回は「被害者特定事項秘匿制度」が適用され、被害者の氏名などを伏せて審理される。そのため白石にも被害者の特定につながるような発言には注意するように、とのことだった。

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 今回、被害者を指すアルファベットはAからIに及ぶ。時系列順に被害者9人を3グループに分けて審理し、公判日程は計24回、77日間にわたって行われる予定だ。

初公判での白石被告 ©時事通信社

 被害者の多さゆえ、初公判では1人1人の被害詳細はまだ明らかにされていない。しかし、事件発覚時の白石被告の自宅の様子や、犯行が行われた8月から10月にかけて白石被告が購入した物品などから、この事件の凄まじい猟奇性が立ち上ってくるのだ——。

「私が殺しました」「あの子はここです」

 検察の冒頭陳述によると、2017年10月30日、行方不明となっていた女性Iさん(当時23)を捜す警視庁の捜査員が、失踪直前にSNSでやり取りしていた白石被告のアパートを訪れる。白石被告は捜査員とインターホン越しに話した際には、Iさんの居場所を知らないとはぐらかしたという。しかし捜査員が室内へと踏み込むと、そこには異様な光景が広がっていたのだ。

事件の現場となった白石被告の自宅 ©文藝春秋

「床にはペット用のトイレシートが敷かれていて、付近にはノコギリや粘着テープ、婦人靴。ロフトに続くはしごには、上から2段目のところに、ロープがかけられていた」(検察の冒頭陳述より)

 その後、キッチンの包丁、まな板、鍋、保冷庫の内部などからは、血液の陽性反応が出た。

 室内に女性もののバッグがあったことから捜査員は厳しく追及。白石被告は観念して「私が殺しました」「あの子はここです」と玄関に置かれたクーラーボックスを示した。ボックスを開けると猫用のトイレ砂でいっぱいだったが、捜査員が掘り起こしたところ、人の頭部のようなものが見つかったのだ。頭部は褐色に変色しており、口に粘着テープが貼られたままの遺体もあったという。