ねこ娘は鬼太郎ファミリーの中でも特に妖怪性が強い

――改めて、上坂さんにとってねこ娘はどんなキャラクターですか?

上坂 そうですね。見た目は可愛いですし、鬼太郎ファミリーの少女枠で、親しみやすい要素は揃っているのに、どこかクールというか(笑)。神出鬼没だし。私は漫画から入ったので、鬼太郎ファミリーの中でも特に妖怪性が強いと思います。ねこ娘って、アニメでも時期や作品によっていろんな描かれ方がされていますけど、でも彼女の根底には、人間と全く違う妖怪であるっていう前提がある。彼女は人間に歩み寄る時もあるし助けたりもするけど、野生動物のように人間との住み分けをしっかりしている子だと思います。

©細田忠/文藝春秋

――水木しげる作品の妖怪って、どこか人間と相容れない部分がありますよね。ねこ娘はその辺りのバランスを取る役割もあるのでしょうか。

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上坂 そうだと思います。鬼太郎は人間に育てられたというバックボーンがありますけど、ねこ娘は人間にそこまでの思い入れは特にない。なので作品の中ではバランサーというか、ツッコミとしていろんなキャラの軌道修正をしている。妖怪の中の優等生タイプというか、しっかり者なんですよ。

神保町の古書店で探して読んだ水木しげる作品

――もともと水木さんの原作を読んでいらしたそうですが、どのあたりから?

上坂 学生の頃に一番古い作品から順に読んでいきました。最初の頃の鬼太郎はめちゃくちゃ怖い印象があります。でも不思議と、水木先生の妖怪って怖いけどとっても愛嬌があるタッチですよね。人間に置き換えたらものすごく怖いことをしているけど、漫画で読むと不思議と「あ、妖怪可愛いな」と思ってしまう。とれたてのカエルの目玉でもいかがですか?とか(笑)。

©細田忠/文藝春秋

――貸本時代の『墓場鬼太郎』ですね。なぜ当時、そういった作品を読もうと思われたのですか?

上坂 私は漫画の入り口が『ゴルゴ13』だったので、劇画が普通だと思ってましたし、なぜか少女漫画には打ち込めなくて。初期設定を間違えたなとは思うんですけど、結局少女漫画的なキラッとしたキャラクターより、劇画のじっとりした昭和の舞台とか、今では考えられない昭和のモラルがふんだんに使われて、現実逃避にはぴったりだったんです。「ここではない、どこか」感がすごくある作品が多かったので。ちっちゃい頃は一人っ子ということもあり、そういうトリップ感がある劇画を好き好んで読んでいたわけです。