『BAD GENIUS/バッド・ジーニアス』
2本目は、2017年のタイ映画のヒット映画をハリウッドがリメイクした作品。大まかな展開はオリジナルと変わらない。貧しい家で育ちながら、その恵まれた才能のおかげで奨学金を獲得して名門校に進学した女子高校生が、友だちになった同級生やその仲間のために試験のカンニング作戦を実行する――。
驚くのは、そのテンポの良さだ。近年のハリウッド映画は上映時間が長くなりがちだが、本作は100分弱という娯楽映画に最適な時間に収めている。とにかく弛む場面や無駄な描写は一切なく、物語は軽快に前進し続けるのである。130分あるオリジナル版から約30分も削っている計算なのだが、内容は決して薄くなっていないどころか、全く劣らない盛り上がり方をしていた。
娯楽映画としても十分に楽しめるのだが、作り手たちが「アメリカの現状への問題提起」を強く意識しており、社会派映画としての苦さを内包しているのも重要だ。オリジナル版にあった貧困の問題に加え、「富」の側の横暴も強調したことで貧富の差が際立っただけでなく、移民問題や人種問題といったアクチュアルな課題もかなりストレートに盛り込んでおり、突きつけてくるテーマはさらに重いものになっている。
よくこれだけの内容をこの時間内に詰め込み、それでいて全く薄味にも駆け足にもなっていないものだ――。巧み過ぎる構成力に感服するしかない。
演技陣では主演のカリーナ・リャンが圧巻だ。知的で凛々しい主人公像を完璧に演じきっており、さまざまな危機的な状況を頭脳と度胸で切り抜けていく様はヒロイックでありキュート。一つ間違うと観客から嫌われかねない言動をしているのだが、ネガティブな感情を全く抱かせることなく、心から応援したい気持ちにさせてくれた。

