『IMMACULATE 聖なる胎動』
アメリカの若い敬虔な修道女が、イタリアの格式ある修道院に招かれ、そこで暮らすようになる。だが、その修道院には何か裏があり、やがて修道女は性体験を経ずに望まざる妊娠をしてしまう――。これが本作の大まかな展開なのだが、昨年公開された『オーメン:ザ・ファースト』とあまりに似ている。おそらく何年か経ったら、二つの内容は記憶の中で混濁してしまうかもしれない。
基本的に私は神も悪魔も、その存在を全く信じていない。キリスト教は特にそうだ。そのため、オカルト映画に出てくる悪魔の誕生とか、聖書的な価値観を背景にした危機感に、全くピンと来ないのだ。オカルト映画を楽しむ上では、神や悪魔といった要素に寄りかからずにどれだけ怖がらせてくれるか――つまり普遍的なスリラー演出がどれだけちゃんとできているかが全てといっていい。
それでいうと『オーメン~』は「悪魔の子の誕生」の動機はチャチに思えたし、実行する組織もさほど恐ろしさを感じるような行動はしていなかった。そのため、怖がらせるための大げさな演出が上滑りしているように映った。
その点で、本作ははるかに勝っている。まず冒頭で描かれる裏切者の修道女の処刑方法が容赦なく、恐ろしいことこの上ない。その後も、少しでも組織に疑問や反抗の態度を見せる者は次々と拷問や粛清に処されていくのだが、その手口も見せ方も迫力満点。ハッタリの演出ではなく、フィジカルにも訴えかけてくるため、主人公の状況がたえず危機感をもって映し出され、観客は緊迫した中でその動向を見守ることになった。
主人公がやられっ放しではなく、必死にあがき続ける姿勢を貫いているのも好感。妊娠して動きがままならない中でも一人で怪しい集団に立ち向かう主人公像に、シドニー・スウィーニーはハマリ役だった。

