西野朗体制になり、選手への信頼と自由が増した中で、あらためて存在感を発揮したのが主将の長谷部誠だった。コロンビア戦前には選手に本音を吐き出させるミーティングを主導し、選手とコーチ陣との橋渡し役なども担った。ただ単に、精神的に皆をまとめる役回りという訳ではなかったのだ。
激闘の末ベルギーに敗れた直後、取材エリアで長谷部は主将の役を一度は辞すことを考えた、と明かした。ぽつぽつと、実は……といったトーンで話し出す。
ハリルホジッチ解任時に思ったこと
「監督交代(ハリルホジッチ解任)の責任が、キャプテンである自分にはかなり大きいと思っていました。なので、『若い選手に、他の選手にキャプテンを任せるというんだったら全面的にサポートします』という話を西野監督にしました。よく責任を取るというのは、やめることだと考える方もいると思うんですけど、逆に『僕にも責任があるから、こういう状況では自分がしっかりやらなければいけないという気持ちも、持ってる』という話もして。でも監督は全然……そのね……キャプテンを代えるという気はまったくなかったのでアレだったんですけど」
言葉を選び、落ち着いたトーンで話を続ける。
「まあこの2カ月間、僕自身は、本当に素晴らしいチームメイト、監督、コーチングスタッフに支えてもらって。チームのみんなが、自然と自分たちがやらなきゃってまとまっていました。素晴らしい仲間に恵まれたなと思います」
「選手の責任は多いなと感じます」
長谷部の、主将としての責任感の強さを感じたことがあった。4月上旬、ハリルホジッチが解任された直後に取材したときのことだ。日本では田嶋幸三・日本サッカー協会会長が会見を行った。その会見を受けたタイミングでの取材だったが、わりとストレートな言葉で状況と心境を語った。前監督への感謝と、自身の主将としての責任を長谷部が口にした後、監督解任のプロセスについて聞いてみた。3月末のベルギー遠征での成績不振が決定打だったのかと聞くと、それは否定した。
「その部分というのは、まああんまりね、いろいろと話せない……話さなくていいことはあると思うので。本当になんでこのタイミングなんだって、思いますよね。応援されてるかたも、メディアのみなさんもそうだと思うんですけど、ただ、僕はいろんな部分を見てるので、選手の責任は多いなと感じます」