日本経済の中心地、東京・丸の内から“マル秘”財界情報をくわしくお伝えする『文藝春秋』の名物コラム「丸の内コンフィデンシャル」。最新号からダイジェストで紹介します。

◆◆◆

日鉄が抱える課題

 遂に日本製鉄(今井正社長兼COO)がUSスチール買収を実現させた。2023年12月、約2兆円の買収を発表してから度重なる延期を経て、合併契約に基づく取引を完了した。28年までに日鉄はUSスチールに約110億ドルを投資、USスチールが米国政府へ黄金株(拒否権付き株式)を発行するなど様々な制約はついたが、ようやく念願が叶った格好だ。

日本製鉄の橋本英二会長兼CEOは「もう一度世界一になる」と会見で語った ©AFP=時事

 買収を率いてきたのは、橋本英二会長兼CEOと森高弘副会長兼副社長。買収完了後の会見に登場したのも2人で、今井社長の姿はなかった。会見で橋本氏は鉄鋼会社として「もう一度世界一になる」と語った。

ADVERTISEMENT

 だが買収について、「橋本・森ラインの思い入れが強過ぎ」(市場関係者)との声もある。同社はグローバルの粗鋼生産能力一億トンを目指すが、買収後も首位の中国・宝武鋼鉄には届かない。内需減退や中国製との価格競争で輸出が伸び悩み、生産体制の見直しで高炉の基数が減るのは必至。世界一を狙うのは困難だ。

 実は、USスチールには自動車用超ハイテン鋼板など、日鉄が得意な高付加価値品の技術がない。さらに、日鉄は米国に最先端の鋼材需要があると見込んで技術移植を目論むが、トランプ政権下でEV需要が落ち込むなど誤算もある。

 投資家の視線も厳しい。大株主の3Dインベストメント・パートナーズがUSスチール買収について「価値破壊的な投資になる可能性がある」とコメント。株主総会で今井氏、森氏の再任反対の議決権行使を推奨すると発表した。

この続きでは、日鉄の子会社が置かれている状況を解説しています》

※本記事の全文(約5000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2025年8月号に掲載されています(丸の内コンフィデンシャル)。全文では下記の内容をお読みいただけます。

★トヨタの復権人事
トヨタ自動車(佐藤恒治社長)の“復権人事”が話題になっている。執行役員の近(こん)健太氏が、7月1日付で2年ぶりにCFOに復帰したのだ。近氏は東北大学出身で・・・
★地銀再編の黒子
伝統的な預貸ビジネスが収益を生む“金利のある世界”に戻り、「体を大きくするのが最大の生き残り策」(大手地銀幹部)と・・・
★超大手に迫るゼネコン​
建設業界でインフロニア・ホールディングス(岐部一誠社長)の積極果敢な経営姿勢が目立つ。先頃決めたのは三井住友建設(柴田敏雄社長)の買収だ。これで売上高は1兆円を大きく超え・・・

出典元

文藝春秋

【文藝春秋 目次】永久保存版 戦後80周年記念大特集 戦後80年の偉大なる変人才人/総力取材 長嶋茂雄33人の証言 原辰徳、森祇晶、青山祐子ほか

2025年8月号

2025年7月9日 発売

1700円(税込)

Amazonで購入する 目次を見る