現在では、夜の街で働く女性たちが自らの経験を配信するチャンネルも増加し、「客がコンビニのお菓子を持ってきたらムカつく」「小銭でもいいからその分の現金を持ってこい」など、実際に働いているコにしかわからないようなエピソードを投稿することは珍しくはなくなった。しかし当時は「風俗で働いていること」を明かしつつ、そこで起きる様々な出来事を顔出しで配信するということはまだ珍しかったのだ。

 内容も、従事している女のコでなければ気がつかないようなリアルかつ具体的なものであり、多くの夜職のコからの共感を集めた。また、言葉遣いの独特さもカリスマ化に拍車をかけた。

「先祖、先祖、先祖が怒ってる! ごめんねぇ~!!!」

 例えば「クソ客らめえええええええええええええ」なるタイトルの配信では「びびびびびょ~!」と絶叫して視聴者の度肝を抜き、客の「おぢ」たちを「キモ客」と断罪しながらも、「先祖、先祖、先祖が怒ってる! ごめんねぇ~!!!」と独特の「りりちゃん節」を多用し、チャンネルを盛り上げるのだ。

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 歌舞伎町に住み込んでいた私は、毎日のように歌舞伎町の住人たちや「ホス狂い」の女のコたちの話を聞き続けていたせいか、「りりちゃん」がこの街の人気者になった頃にはすっかりこの世界に染まってきていた。私自身も彼女のこうした動画配信やSNSの更新、女のコたちが教えてくれる「どこぞのホストクラブで一晩で1000万円使ったらしい」という噂話や武勇伝を、いつしか楽しみにするようになっていた。

 だがその一方で、彼女がろれつも回らず、泥酔しているであろうことが見て取れる様子で配信したり、自身のSNSで「早く捕まりたい」と心境を吐露したりしていた危うげな様子を案じてもいた。

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