わいせつ目的で「約300人に電話した」と語った、元教師の男。被害者の数は40人以上……。なぜ多くの少女が、彼の話にダマされて、わいせつ行為を許してしまったのか? 平成18年に起きた事件の「悪質すぎる犯行手口」を紹介。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の1回目/後編を読む)

写真はイメージ ©getty

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犯人は元小学校教師

 発端は8年前にあたる1998年の事件である。被害申告してきた少女の自宅近くで複数の捜査員が張り込んでいた。そこに現れたのが当時39歳だった小学校教師の岡田正則である。

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「岡田正則だな。ちょっと事情を聴きたい。署まで来てくれるか」

「えっ……」

 岡田は顔色を失った。捜査員に取り囲まれ、もはや万事休すだった。

 岡田は夏休み期間中を利用し、地元の中1少女宅に電話をかけ、「私は医者だが、あなたは性病にかかっている疑いがある」と言って誘い出し、自宅近くの山林で「治療」と称し、服の中に手を入れて胸を触るなどのわいせつ行為をしたという容疑がかかっていた。

 その翌日にも岡田から電話がかかり、怖くなった少女が警察の「女性被害者相談電話」に連絡し、それを受けて捜査員が張り込んでいたところ、約束の場所に岡田が現れたため、強制わいせつ容疑で逮捕したというものだった。

 地元は騒然となり、勤務先の校長は「保護者や地域に申し訳ない。子どもたちにショックを与えないように取り組んでいきたい」と謝罪した。岡田は3年生の担任だったほか、パソコンクラブの顧問として5~6年生を指導し、「教育熱心で、子どもたちからも親しまれていた」と説明した。

 だが、岡田はこのほかにも別の地元の小中学生3人に同様の行為をしていたことが発覚し、懲戒免職処分になった。逮捕時は複数の少女の名前や連絡先を書いたリストを持っており、「この子たちにも連絡を取るつもりだった」と供述した。

 裁判所は「計画的犯行で、許しがたい犯罪だ。教師の社会的信用も著しく傷つけた」と断罪し、懲役3年の実刑判決を言い渡した。

 岡田には結婚歴があったが、わずか1年で離婚していた。それ以来、大人の女性が苦手になり、少女らを性的対象として見るようになった。出所後は両親と一緒に実家に住んでいたが、近所の白い目に耐えられず、別の都市に転居して、学習塾で働くようになった。

「自分は人権問題の活動に取り組んでいたので、父兄とトラブルになり、それが原因で学校を辞めることになったんです」