塾の経営者にはそんなふうに説明していた。当時は不祥事を起こして辞めた教師かどうかを確認する術もなかった。塾では真面目に仕事をしていたので、岡田が新たに手口を巧妙化させて、わいせつ行為を再開しているとは夢にも思わなかった。

情報源は「新聞の出生欄」…最悪の犯行手口

 その手口はこうだ。近所の図書館にこもって、12~13年前の新聞の出生欄を確認する。新生児の名前と親の名前と住所を控え、それをヒントにパソコンの電話帳ソフトで電話番号を割り出し、狙う少女のリストを作る。

 そして、以前と同じような方法で少女を呼び出し、「学校で尿検査をしたでしょう。その結果、性病にかかっていることが判明した。今のうちに治さないと大変なことになる。でも、心配しなくていい。親にも知られず、国のお金で治せるから」などと言って、信じた少女にわいせつ行為を働くというものだった。

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 岡田は白衣を着て現れ、黒いカバンを持ち、いかにも医療関係者らしく振る舞っていた。聴診器を当てたり、体温を測ったり、「薬を塗る」と称して衣服を脱がし、少女の胸や陰部を触ったりしていた。

 ちなみに少女らに話していた性病の説明はデタラメそのものだった。

「自慰行為をすると性病になることが多いんです。注射で治す方法と男性ホルモンで治す方法があります。でも、注射はガマンできないほど痛いですよ」

「性病にかかると、感じ方が変わるんです。治療のためにセックスする方法があるんです。みんなこれで良くなっているんですよ」

「男性器の先から透明な液が出ているでしょう。これが薬になるんです。口から入れる方法と下から入れる方法があります」

 荒唐無稽な話ばかりだが、これを元小学校教師だった岡田は巧みな話術やジェスチャーで少女たちに信用させ、次々と強姦を成功させていた。しかもその様子をデジカメで撮影し、パソコンに保存していた。

 のちに逮捕され、警察に家宅捜索されたとき、これらの動画のほか、全国の約5000人の女子小中学生の名前と住所を記したノート10冊と、A4判の紙に書かれたリスト約150枚が押収された。

写真はイメージ ©getty

 岡田は自分の話を信じる少女がいれば、地元だけではなく、数百キロ離れた少女の地元まで車を走らせ、少女を車に乗せて山中に連れ出し、同様の犯行を重ねていた。

 岡田は「約300人に電話した」と言うが、13府県の約40人が被害に遭い、結果的には5人の少女に対する準強姦や準強制わいせつの罪で起訴された。

 岡田の被害に遭いながら、「娘の将来を案じて告訴しない」と断念した親も多かった。親もまた、耐え難い傷を負った被害者だった。

 被害者である5人の少女たちは、性病の心当たりがあったというわけではなく、全員が性体験もない処女だった。最後はキスされて唾液を飲まされた少女もおり、「これが治療になるなんておかしい」と感じていた。

次の記事に続く 《懲役は…》「事件後は生徒が3分の1に減りました」40人以上の少女をわいせつ『47歳・ヘンタイ塾講師』の犯行があまりにも身勝手だったワケ(平成18年)