2億8000万円にのぼる背任容疑で、岩本絹子元理事長が逮捕・起訴された東京女子医科大学で新たな問題が発覚した。理事の一人で、木下グループ社長の木下直哉氏が、大学改革の必要性を訴えてきた“七人衆”と呼ばれるドクターの一人に圧力をかける封書を送っていたという。ノンフィクション作家・森功氏のレポートを一部紹介する。

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配達証明付きの封書が……

 木下は自らを警戒する七人衆の動きを察知したのだろうか、この間、彼らの行動を封じ込めようとしたように見える。七人衆の1人、消化器肝胆膵外科教授の本田五郎に尋ねた。

「僕たちが何人かの教授にメールを送ったことがありました。そのあと教授たちに木下グループの秘書から『東京女子医科大学病院 有志代表と至誠会の現状から女子医大を守る件について』というメールが届いた。木下さんが教授たちに木下さんとの面談を求め、それを送り付けたのです。しかし個人情報である教授のメルアドを外部に漏らすのは、明らかなコンプライアンス違反ではないでしょうか。そこには秘書が学長室から聞いたと書いてありました。で、『このメールは理事会の意見ですか』と理事会に質問したのですが、理事会では把握していないと返事がきました」

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文科省に要望書を提出し、取材に応じる新浪氏(右から2人目)。文科省からの要請をきっかけに、第三者委員会の姿勢が一変。アンケート調査もアリバイづくりのような1回目に比べて2回目は様変わりした Ⓒ時事通信社

 すると、ほどなく木下本人から本田へ配達証明付きの封書が届いた。

〈貴殿らは「有志一同」などと称しておられますが、その実態は、本学のことなど何も考えておらず、揚げ足取りのような批判を繰り返すだけの無責任な集団にすぎない〉(24年7月3日付)

 本田はこれを「ハラスメントに近い感情的な文章」だと断じる。七人衆は関係者の署名集めだけでなく、7月2日に文科省を訪れ、岩本問題を直訴した。文科省が理事会に対して適切な指導をおこなうよう要請したのだ。