2004年3月23日、福岡地裁で「福岡一家4人殺人事件」の初公判が開かれた。被告人は中国人の元専門学校生・魏巍（ウェイ・ウェイ＝逮捕時21）。検察側の冒頭陳述で明らかになった犯行の全貌は、計画的で冷酷なものだった。
緊縛されたAさんは生きたまま海中に投棄され、溺死
事件は2003年6月19日深夜から20日未明にかけて発生。魏と共犯の王亮（ワン・リァン＝逮捕時22）、楊寧（ヤン・ニン＝逮捕時23）の3人は、被害者Aさん（当時41）方に侵入。Aさん不在の間に妻Bさん（同40）を浴槽で溺死させ、長男Cくん（同11）を窒息死させた。
さらに、長女Dちゃん（同8）を人質として確保し、帰宅したAさんを拘束して金品を強奪したのち、Dちゃんを殺害。緊縛されたAさんは生きたまま海中に投棄され、溺死した。
冒頭陳述では犯行に至る経緯も明らかにされた。
「被告人、王亮及び楊寧の3名は、最終的には家族全員を皆殺しにする計画であり、2階で就寝中の子供達のうち一人を生かして人質にし、ベンツで帰宅するであろう家人を脅してキャッシュカードの暗証番号を聞き出せば目的を達し得ると考え、王亮に子供達を見張らせ、被告人及び楊寧が浴室内に侵入し、家人を殺害することに決めた」
犯行前、3人は遺体の遺棄方法について入念に準備していた。当初は山中に埋める計画だったが、「被害者方家族全員分の死体を埋める穴を掘るのが大変」と考え、海中投棄に変更。重りとして購入したダンベルが事件解決の糸口となった。
「王亮は、死体を海中に沈めるために付ける重りとして、かねて準備していた手錠2個だけでは足りないことから、6月18日、福岡市東区内の量販店において、手錠2個及び重量5キログラムのダンベル2個を組み立てられるダンベルセット2セットを購入した」
事件後、3人はAさんのベンツを久留米市の工場敷地内の駐車場に放置。ATMでの現金引き出しは「危険を冒してATMで現金を引き下ろすだけの価値がない」と判断し、実行しなかった。魏は犯行の報酬としてわずか1万円を受け取っただけだった。
犯行の4日後、王と楊は中国へ逃亡。魏のみが日本で逮捕され、裁判にかけられることとなった。
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