お母さんたちが抱える“心理的な孤独感”
――本作を読んで共感を寄せているのは、どんな人たちなのでしょうか。
白目 この作品に限らず、私の作品を読んでくださる方は「子育て中のお母さん」「子育てを終えたお母さん」が大半かと思います。または夫への不満を抱えた方々など……(笑)。
子育ては十人十色で正解がありません。だからこそ、「自分だけなのではないか」「他の人はもっと上手くやっているのではないか」と思い悩むことが尽きないのだと思います。
――お母さんたちはいつも不安を抱えているんですね。
白目 私自身もそうでしたが、子育ての苦しさの根底にあるのは、物理的な孤独感ではなく、心理的な孤独感なのだと感じています。
そんな方々が私の作品をご覧になって「自分だけではない」「みんな同じなんだ」と感じてくださり、明日からの子育てを頑張る気力につながったり、過去の苦しかった思いを昇華できたりして、胸のつかえが少しだけほぐれてくれるといいなと思います。
――最後に、この作品を通じて伝えたいメッセージを教えてください。
白目 作品の中では、登場人物たちが何度も話し合ったり対策を考えたりしながらも、なかなか状況が変わらず、「何も変わらない」というセリフが出てきます。現実でも、そうした閉塞感のなかで、困りごとをひとりで抱え込んでしまう方は少なくありません。
しかし、最後まで読んでいただくと、ほんのわずかではありますが、「確かな変化」が描かれていることに気づいてもらえるのではないかと思います。それは、劇的な出来事ではなく、関わる人たちの小さな積み重ねや、誰かの“声を上げる勇気”によって生まれた変化です。
困った状況を前に、何もかもを特定の家庭や保護者の責任にしてしまうのではなく、周囲の大人や専門家がきちんと関わることで、たとえ親や環境が変わらなくても、子ども自身の世界が少しずつ動いていく。そんな希望をこの作品の中に込めました。
