膨大なビデオ・コレクションはどこへ?
2008年に「キムズビデオ」最後の店舗が閉店すると、5万5000本もの膨大なビデオ・コレクションはイタリアの島に搬送された。閉店にあたって、コレクションの収蔵・管理、ならびにレンタル会員が引き続きそのコレクションにアクセスできること、などを条件に引受先を募ったところ、シチリア島サレーミの自治体が手を挙げたのだ。街の再開発にまつわる文化事業の一環として、キムさんの集めた世界最大級のビデオ・コレクションを活用しようというのである。
ところがその後、連絡はばったり途絶えてしまう。本作は「キムズビデオ」をこよなく愛する監督が、「キムさんの集めたビデオ」の行方を追ってシチリアに飛び、ずさんな「管理」の実態を知ってコレクションの救出を目論むアドベンチャーだ。生粋の「シネフィル」監督の感情は主に他の映画の引用で語られる(が、それはあまり面白くない)。行く手に立ちふさがるのはマフィアとの黒い噂も絶えないシチリアの政治家たち。果たしてレアビデオの神は「キムさんの集めたビデオ・コレクション」に、そして結果のためなら手段を選ばない監督に微笑みかけるのだろうか?
INTRODUCTION & STORY
VHSビデオの登場が、映画の見方を変えた。
1980年代以降、レンタルショップの急速な拡大のなか、独自の視点による品ぞろえのショップも登場し、よりパーソナルな映画の愉しみ方ができるようになった。メディアがVHSからDVD、Blu-ray、そして配信へ進化するにつれ、レンタルショップが下火になっていく。
アメリカ・ニューヨークのキムズビデオ。5万5000本ものVHSをそろえたこのマニアの殿堂は、2008年に閉店となり、膨大なコレクションはシチリアのある村に引き取られた。
そのコレクションは、雨漏りするような倉庫でずさんな管理をされているという、ひどい状況にあった。
そこで本作の監督たちは一計を案じ、ビデオを救いだすために立ちあがる。
ジャンルとしてはドキュメンタリーではあるが、映画の神を召喚(?)するなどして、かわいそうなVHSを奪還する、「映画マニアが映画の力で映画を救う」アドベンチャー映画の様相を見せていく。なんとも変わった冒険の結末は……。
STAFF & CAST
監督:アシュレイ・セイビン、デイヴィッド・レッドモン/2023年/アメリカ/87分/配給:ラビットハウス、ミュート/©Carnivalesque Films 2023


