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44歳になった草彅剛はどこへ向かおうとしているのか?

与えられた場所で力を発揮する「タモリ的」な人

2018/07/09

 いまから20年ほど前、草彅剛に似ているとよく言われた。誰が? いや、筆者が。もっとも、草彅に似ているというのは当時、「微妙なルックス」の代名詞のようになっていて(もちろん草彅本人が微妙ということではない)、実際、『笑っていいとも!』でやっていた芸能人のそっくりさん集合のコーナーでは、草彅似として出てくる一般人がことごとく微妙で、番組にレギュラー出演していた本人が「僕と似てる人はやばいんですよ!」と言うほどだった。

草彅剛 

自虐的な活躍と、「いいひと。」的親近感

 そっくりさんが続々と名乗り出たのは、逆にいえば、彼の親しみやすいキャラゆえだろう。ちなみに草彅が同じSMAPの中居正広、香取慎吾に続き、『いいとも!』に出演するようになったのは1995年10月のこと。当時21歳だった彼も、きょう7月9日、44歳の誕生日を迎えた。

 SMAPのメンバーでいちばん華がないと言われ続け、本人も『いいとも!』に出始めてからも「今年こそ草彅が来ると毎年言われている」などとよく自虐的に言っていた。筆者が草彅に親近感を抱いたのは、そういうところも含まれる。

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 初の主演ドラマ『いいひと。』(1997年)の宣伝ポスターのキャッチコピーも「最初で最後の主役です。」という自虐めいたものだった。しかし、ふたを開けてみれば、『いいひと。』は草彅と主人公のキャラクターが合致して評判をとる。以後、彼は「最後の主役」どころか、連続ドラマにあいついで主演し、映画や舞台でもめざましい活躍を見せるようになった。

左から草彅剛、稲垣吾郎、香取慎吾 

 2006年には舞台『父帰る/屋上の狂人』で、読売演劇大賞の杉村春子賞を受賞している。菊池寛の戯曲との組み合わせは意外な気もするが、その後も草彅は舞台『瞼の母』(2008年)や映画『山のあなた 徳市の恋』(2008年)など戦前からの名作のリメイクにもけっこう出演している。飾り気のない風貌からして、古い日本人を演じるのに向いているのだろう。かと思えば、2009年に放送されたドラマ『任侠ヘルパー』では介護施設で働くヤクザを演じ、本来のキャラとのギャップが視聴者を驚かせた。