『ランド・オブ・バッド』

 ベテランのスターが宣伝では大きく扱われているものの、劇中では後衛的な存在でしかなく、あまり名の知られていない若手が前線で頑張る。それでいて、最後はベテランが美味しいところを持っていく――。こうした図式のアクション映画は、近年アメリカでよく作られている。

 そして、この手の映画は地雷になりがちだ。というのも、そのスターの名前だけで客を呼べればいい――という意識が見え見えで、演出もプロットも手抜きが酷いのである。

© 2025 JTAC Productions LLC. All Rights Reserved.

 それでいうと本作もその図式に当てはまる。

ADVERTISEMENT

 イスラム過激派組織に拉致されたCIA工作員を救出するため、スールー海の孤島に潜入した特殊部隊が描かれるのだが、基地から無人戦闘機を操縦して援護する技官をラッセル・クロウが演じているのだ。一方で、前線には有名な俳優はいない。これは、完全にあのパターンだ。

 が、意外なことに、これがちゃんと作られている。

 敵の猛烈な反撃を受けて部隊は壊滅。ただ一人生き残ったのは、実戦経験のほぼない通信兵。ラッセル・クロウが彼を無線で誘導しながら危機を脱していくという展開で、この設定が活きている。次々と訪れる危機をいかに回避するかはサスペンスフルに描かれているし、そうした危機を乗り越えていく中で生じていく2人のバディ感も熱い。

© 2025 JTAC Productions LLC. All Rights Reserved.

 また、展開も二転三転し、終盤まで先が読めないまま緊張感が続いたのにも驚いた。このジャンルにありがちな「とりあえず敵をシバいて終わり」というような安易な内容になっていないのだ。無意味に思えた序盤の描写が終盤の最大の危機に繋がってくるなど、構成も練れている。

 もちろん「大傑作」という類の映画ではない。ただ、「退屈せずにそれなりに楽しめるソルジャー系アクション映画」は近年では希少価値になってきているので、このジャンルが好きな方には必見だとお伝えしたい。

『ランド・オブ・バッド』

監督・脚本:ウィリアム・ユーバンク/出演:ラッセル・クロウ、リアム・ヘムズワース、ルーク・ヘムズワース、マイロ・ヴィンティミリア、リッキー・ウィットル/2025年/アメリカ/113分/提供・配給:AMGエンタテインメント/© 2025 JTAC Productions LLC. All Rights Reserved./8月15日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー