日航123便墜落現場

 8月13日午前5時半すぎ。長野県北相木村に急遽設置された日航事故対策本部。御座山の麓にある山口の公民館で、長野県警の報道官がバインダーを持って歩いてくると「みんな、集まって」と大声で叫んだ。居合わせた報道陣がぞろぞろ集まる。

「発表。やりました。長野県警ヘリ“やまびこ”が機体発見。場所は群馬県御巣鷹山南南東斜面。機体は長野県側に一切ありません。以上」。

 午前5時55分だった。県警報道官が再度大声で発表を繰り返した。発表には「長野県警のいっていた通りではないか」という思いが言外に滲み出ていた。各社とも潮が引くように北相木村の対策本部を後にした。

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 私たち赤旗の取材陣は、前夜に地元川上村在住の新海重信さんと、持参した国土地理院の5万分の1の地図で、およその墜落地点を推測していた。平野部の長野側は消防団らの話から墜落してはいないので、人家から離れて死角になっている県境の群馬側の林道や神流川の上流と沢を調べて大蛇倉沢か長戸沢あたりだと判断していた。御巣鷹山の南東になる。後になるが、この地点は実際の墜落現場とは400mの誤差があった。墜落地点はその向かい側の無名の尾根で、スゲノ沢に機体後部が滑り落ちていた。そこで4人の生存者が発見されている。

 事前に検討していた墜落現場取材を二人一組の2班に分け、長野側の南相木村の三川と上野村の三岐から神流川沿いに遡さかのぼっていく2ルートから墜落現場をめざすことにした。

 2班に地図上で確認し、あとは道なき道を登って見通しのある尾根に着いたら、報道陣のヘリの音で誘導してもらえると説明した。山の鉄則である「道に迷えば、さらに登って尾根をめざせ。谷には下らないこと」「時々、後ろを振り返って歩いてきた道と周りの景色を見て確認しておく」。下山する時に迷わないためである。

 6時半には2班の4人が出発した。残りの本隊は車で7時にぶどう峠を越えて群馬側の上野村をめざす。ガタガタ道で峠に着くまでに30分かかった。道の端は崩れており、車は注意して登っていく。峠は雑木林に囲まれ見通しは悪い。500mほど上野村側に行くと、南方面に御巣鷹山が見えるが、煙1本もなく、静寂な夏山であった。昨夜からの出来事など、何もなかったように思える。事故現場は御巣鷹山の向こう側しかないと確信した。