18年越しのリベンジともいえるモンゴルご訪問
モンゴルご訪問の際も、ご体調の不安は完全には払拭されていなかった。事前に雅子さまのお出ましが見込まれたのは、7月8日の歓迎式典や「日本人死亡者慰霊碑」の供花と拝礼、晩餐会、11日の国民的なスポーツの祭典「ナーダム」の開会式、12日の草原での競馬観戦だった。それ以外の学校のご視察などは、「当日になってみないとわからなかった」(宮内庁担当記者)というくらいはっきりしなかった。
だが、雅子さまはナーダムの開会式のあと、弓競技をご覧になった。これは予想外のサプライズだった。羊のくるぶしの骨を指で弾いて的に当てる競技「ジャガイ」も体験され、陛下は外されたものの、雅子さまは最高得点の的に見事命中。ここ一番の勝負強さと旺盛なサービス精神を見せられたのだった。骨をはじく前に入念に練習をされていたので、もしかすると狙っていらしたのかもしれない。
陛下は2007年、皇太子時代に同国を訪問されているが、このとき雅子さまはご療養中で同行がかなわなかった。18年越しのリベンジともいえるこのモンゴルご訪問で披露された雅子さまのお衣装は、いつにもまして和テイストが効いていたように思う。
どこかで見たような雅子さまのシルエット
日本の職人技の細かさや繊細さを現代風に応用して、洋装に取り入れる手法が「令和流の皇后ファッション」だと強く感じたのは、12日にウランバートルから約100キロメートルの距離にある大草原でお召しだったロングジャケットだ。後日、宮内庁の公式インスタグラムにアップされた写真をよく見ると、このジャケットは日本の伝統工芸である「絞り染め」だった。淡い藤色の地に薄い黄色と黄緑色が浮き立って、絶妙な風情を醸し出していた繊細なシルクの絞り染めの布を、職人が手縫いでロングジャケットに仕立てたのかもしれないと思った。
このお召し物に使われている色の一つ、黄緑色をさらっとボトムスに使う思い切りの良さ、それもスリムパンツだ。パンプスも同色の黄緑色で、縦長のIラインを演出されていた。どこかで見たようなシルエットだと思ったら、皇太子妃になられて間もなくの1994年、サウジアラビアをはじめ中東4か国ご訪問時、サウジアラビアでお召しになったグリーンのロングジャケットとネイビーの、クールなコーディネートがパッと頭によみがえった。
年齢を重ねてから、雅子さまがお選びになる色はピンクやベージュなど、柔らかみのある色が多い。それでも、見覚えのあるシルエットでモンゴルの草原を颯爽と歩かれる雅子さまを拝見し、強烈なインパクトを放った砂漠のシーンを思い出した人もいたのではないか。

