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 朴前大統領側はこれに対し、国際世論に訴える手法で反撃した。在米の支持者らが「(朴前大統領は)汚く冷たい部屋で、電気がついたままで寝られない」、「適切な寝台で寝られず慢性疾患を患っているのに、適切な治療が受けられない」など拘置所で深刻な人権侵害に遭っていると訴え、死刑宣告されたリビアの独裁者カダフィの次男を弁護し釈放に持ち込んだ辣腕国際法務チーム、MHグループに国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)へ実態報告書を出すよう依頼したのだ。

 このニュースが駆け巡ると、ソウル拘置所は、「トイレや洗面台を含む10平方メートルほどの通常なら6~7人が使う部屋を使用していて」、「治療も定期的に行われ、オンドル(床暖房)も使っている」と反駁し、奇しく朴前大統領のソウル拘置所での優待ぶりが露わとなった。

 結果、そんな人権侵害話もいつの間にか雲散霧消となったが、朴前大統領はその後、拘置所へベッドを入れるよう要求したそうで、しかし、それも却下された。それからは、「1年4カ月の拘置所での暮しを通じて、(慣れる)方法をそれなりに取得したようで、最近は諦観しているようだ」(ソウル新聞)という。

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「食事が喉を通らない」と主張する李明博

 そんな朴前大統領と対照的なのが、横領・背任などで起訴され、3月23日に東部拘置所に収監された李明博元大統領だ。ソウル新聞によると、ここの12階の最上階の独房に収監され、本は山積みにされているが読書している姿は目撃されたことがないそうだ。

 裁判所では、「裁判が一回あるごとに、三日間は食事が喉を通らない。まずは生きることが優先ではないか」と健康悪化を訴え、週3回行われている裁判を2回にしてほしいと懇願したという報道が流れたが、拘置所では、収監者が1食抜くと「不食」の報告がすぐに上がる仕組みになっており、3日も食事を抜けば大騒ぎになるはずだという。

初公判に臨む李明博元大統領 ©getty

サイクリングに面会に……充実した拘置所生活

 李元大統領の1日は、「とても忙しく」、「朝には弁護士と、午後には夫人と子女などの家族との面会があり、時々、特別面会もある」そうで、多くのかつての側近らも拘置所に面会のために出入りしており、「運動は、サイクリング器具が拘置所内に導入されると他の収監者が使わない時に利用している姿が目撃されている」。

 このサイクリング器具は、同じ拘置所に収監されている崔順実氏も時々、利用しているそうだ。

 朴前大統領が弾劾、罷免された時、もしかしたら自らの命を絶つのではないかとも思った。母親をテロの銃弾で失い、父親を側近に殺されたという苛酷な生い立ちと、19年に及ぶ隠遁生活を送った過去から、絶望が耐えきれないほどに達するのではないかと考えたのだが、当時、韓国の記者たちからは一蹴された。

「なんの罪もないと思っているのにそんな選択をするはずがない。弾劾され罷免されたのはハメられたからだと思っているから、汚名を返上するまでは絶対にあきらめないだろう」

 6月23日に93歳で鬼籍に入った金鍾泌・韓国元首相の夫人(故人)は朴元大統領とは従姉妹の間柄で、金元首相は以前、雑誌のインタビューで朴元大統領をこう表した。

「天上天下唯我独尊」

 朴前大統領は他の収監者と交わることは決してないそうだが、崔順実氏は最近、拘置所にいる他の収監者と仲良く交わっているという。