日本経済の中心地、東京・丸の内から“マル秘”財界情報をくわしくお伝えする『文藝春秋』の名物コラム「丸の内コンフィデンシャル」。最新号からダイジェストで紹介します。
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ロート製薬の社長交代劇
ロート製薬がアクティビストの攻勢に揺れている。英投資ファンドのアセット・バリュー・インベスターズ(AVI、ジョー・バウエルンフロイントCEO)が2%超の株式を保有。経営戦略の見直しを迫られる中、6月の株主総会で6年務めた杉本雅史社長が退任し、瀬木英俊常務が昇格したのだ。
創業は明治時代で、1909年に売り出した「ロート目薬」の大ヒットで、全国的に知られる企業となった。現会長の山田邦雄氏は創業者の曾孫である。
一方、AVIは、2018年にTBSホールディングス(阿部龍二郎社長)に株主提案を仕掛けて名を上げ、「詳細な企業分析に基づく提案を行う」(市場関係者)ことで知られる。
焦点となるのはロート製薬が成長分野と位置付ける再生医療事業の行方だ。実は、山田会長の肝煎り事業で、前社長の杉本氏も、2021年に膝関節の再生医療を手掛けるオリンパスRMS(現インターステム)を買収するなど力を入れてきた。
だが、インターステムは赤字が続き、AVIは再生医療事業全体でも、投資に見合った収益を生み出していないと主張する。
「今年4月、ロートに送った100ページ超の提案書では、再生医療事業からの撤退を提案する一方、『肌ラボ』シリーズなどで収益の6割超を叩き出すスキンケア事業への注力を求めた」(同)
そんな最中に起こった社長交代劇は、「創業家とAVIとの板挟みになる格好で、杉本氏が退任を余儀なくされた」(メガバンク幹部)と見られている。
後任の瀬木氏は日本ヴイックス(現P&Gジャパン)から転職後、経営企画部長など中枢を歩み、早くから次期社長と目されてきた。今年策定した10年間の中長期成長戦略では、再生医療事業を継続する方針を示しており、AVIとの攻防は続く。
一方、国内医療用点眼薬市場で50%超のシェアを握る最大手・参天製薬(伊藤毅社長)も苦境に立たされている。
〈この続きでは、参天製薬の苦境について解説しています〉
※本記事の全文(約5000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2025年9月号に掲載されています(丸の内コンフィデンシャル)。全文では、下記の内容もお読みいただけます。
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