地元オージーキッズも大興奮
しかし、そんな地平線まで続くビーチや内陸まで繰り広げられた壮大なスペクタクルを地元のオージーらは、それを見下ろせる崖上でデッキ・チェアーをズラリ並べ、ドリンク片手に目を細め、LCACが巻き上げる強烈なダウン・ウオッシュに混じった砂嵐や水しぶきを被って、歓声を上げているのである。
背後から銃声がしても悲鳴を上げる地元オージーもいない。
それもそのはず、このあたりは民有地なのである。
これが沖縄であれば上陸後、いったん状況が停止し、また別の演習場で地上戦闘再開となるが、ここスタネージでは上陸後そのまま内陸部まで進攻するという、より実戦的な訓練ができるのである。しかも小は拳銃から大は12.7ミリ重機関銃まで、空砲だが発砲までできるのである。
さらに地元オージーキッズや家族連れは自衛隊水機団のAAV7に近づき、自衛隊員とわきあいあいと記念写真に収まろうとするくらい親日なのである。
日本の平和は守れるのか
このタリスマン・セイバーでは、自衛隊も純粋に訓練に没頭でき、当初の目的より実戦的な経験を積み、かつ各国軍との連携を強化することができた。
しかし、このような演習を目の当たりにする度に願う。これらの訓練が、訓練で終わってくれるようにと。しかし……次の瞬間にはそれが叶わぬ願いだと悟る現実がある。今回の作戦中も、沖合には中国の情報収集船が出没し、怪しげな行動を繰り返していたのが目撃されている。
そんな豪州も前の大戦では日本と敵同士、北部の大都市ダーウィンを帝国海軍機が空襲、約250人の犠牲者を出したばかりか、ニューギニアやガダルカナル島はじめソロモン諸島でも日本軍と海戦、地上戦をくりひろげ、戦後しばらくは反日感情があったものの現在はQUAD(4か国戦略対話)のメンバー同士、今や日豪で戦闘機や護衛艦を共同開発する間柄である。
我が国が再び戦火にまみれることのなき唯一の法は、今回の地対艦ミサイル実射訓練にしろ、水機団の水陸両用戦闘能力にしろ、強力な武器や装備を適切に取り扱い、最大限の効果を発揮させる自衛隊員の練度と優秀さを誇示し、敵に侵略をためらわせることしか今はない。我が国の隣国の核保有国の独裁者がもはや話の通じる相手ではないことは明らかである。それどころか日本人の誠意や良心、ケンポーの精神を鼻で笑う始末である。
首相はじめ閣僚の大半がそんな敵国の顔色をうかがうだけで「イカン」としか言えんようでは、日本はなめられる一方、軍事的には充分な装備を整え訓練を怠らずとも、政治的には敵に侵略を企図させる一方である。日本の平和も風前の灯火と認めざるを得ない。
これが8月15日終戦の日を迎えた日本の姿なのか。これが英霊たちが命がけで守ろうとした子孫なのか。
「座して平和は訪れない」そして「その平和のために犠牲になった者がいるのだ」。英霊がそう叫ぶ声が聞こえたのは不肖・宮嶋だけなのか。
撮影=宮嶋茂樹






