不肖・宮嶋、アメリカさんに招かれて横須賀まで来たで。
こんな、ちっちゃい船のためにニューヨーク・タイムズやウォール・ストリート・ジャーナルまで来たんか?
こんなタグボートみたいな地味ぃーなルックス撮りに「長老」軍事評論家、岡部いさく氏から「コソボの戦友」フジテレビ上席解説委員能勢伸之氏も、さらに「歩くジェーン年鑑」柿谷哲也氏等、錚々たるメンバーが集まったんか?
しかし、さすがミリタリー専門家らは見る目が違う。
「あのマストの上の八角形のはカメラだろうか?」
「甲板のコンテナに想像を絶する機器がはいってるのだろう」
「いやコンテナの上に衛星アンテナが4本以上立ってるから、武器でなく通信機器でまちがいないだろう」
と興味津々である。
ここアメリカ海軍横須賀基地内には満載排水量10万トンを超える、原子力空母「ロナルド・レーガン」にステルス三胴艦「オークランド」さらに対岸の海上自衛隊基地には自衛艦最大の満載排水量2万6000トンの護衛艦「いずも」も控えるなか、この船わずか673トン、「R・レーガン」の100分の1以下。火砲どころか機関銃も見えない。こんなしょぼい「軍艦」に対して我々に許されたのは10時から始まるこの船が所属する「第1無人水上艦隊」率いるジュレマイア・ディリー中佐による記者会見まで30分、バース(波止場)からの外観の撮影だった。そりゃあ原子力空母なら丸一日でも回り切れんが、その100分の1以下である。10分もあれば十分であった。
アツいガンを飛ばしているのは日米のメディアだけではなく……
そもそもこの「レンジャー」はメキシコ湾での油田作業員を輸送するために設計製造された民間船を米海軍がUSV(無人水上艦)として改造した船である。米軍が配布した資料によると全長59.1メートル、総排水量673トン。積載物がない状態で最大速度は38ノット、はまあ速いほうである。流線型の艦首や元が民間船として設計されたせいか、艦橋以外に居住区であろうか、窓があるのが外見上の特徴ぐらいである。
しかし、ちゃっちいルックスにアツいガンを飛ばしていたのは日米のメディアだけではなかった。この船にはそれはそれは味方からしたら頼もしい、敵からしたら恐ろしいポテンシャルを秘めているのであった。
こんな見てくれでも、この船、アメリカ海軍所属のれっきとした軍艦である。「戦艦」「巡洋艦」などのカテゴリーはUSV、無人水上艦である。しかもUSVとしてはこれでも「大型」のカテゴリーに入る。
わざわざ「SURFACE(水上艦)」と銘打ったからには米軍にはすでに無人機グローバル・ホークの海軍版「MQ-4 トライトン」も日本に配備済み、空母への発着艦も成功しているし、X-47ペガサス・ステルス無人戦闘攻撃機も開発中。もうマジで、米軍には無人機空母や無人潜水艦まで現実味帯びてきてるのとちゃうか。