そして実際昨年のRIMPAC(環太平洋合同演習)ではこの「レンジャー」は海上自衛隊と訓練を行っているのである。そして敵の脅威から人員が距離を置けるいわゆるスタンドオフ構想にもかなう等メリットは計り知れないのである。つまりや、敵から近い危険な海域にはこれらUSVを派遣し、人はさらに離れた空母打撃群や有人水上戦闘艦部隊におりながら偵察でき、攻撃も行えると、将来はそんな海戦がくりひろげられると米軍はいまからそう読んでいるのである。いまはそのための自律航行のための情報収集がメインの任務という。
この「レンジャー」と「マリナー」もアメリカからここ横須賀まで出入港とRAS(洋上補給)時以外ほとんど自律航行してきたのである。操縦はコンピューターが舵をとり、乗員は念のため監視してるだけ。その時間と手間にかわって、なんやすっごい実験つづけていたのであろう。実際この船はまごうことなき「軍艦」なのである。自衛の武器ぐらいは当然搭載しているはずである。またこのレンジャーの甲板にミサイルランチャーが搭載され射撃した写真も撮られている。
自己主張の激しいアメリカさんが謙遜するということは……?
おそらく作戦や任務に合わせてこの後部甲板に搭載されてるコンテナを積み替えるのとちゃうやろか?
興味は尽きないんやが、デイリー中佐のお答えは、「個々の機器の性能の詳細はお答えできない、この船の主任務はあくまでUSVと有人戦闘艦統合を目指す試験艦であり、その情報は各部隊と共有し将来の水上戦闘に備えることだ」とまあ当たり前っちゅうたらそうなんやが、最新「兵器」に対する軍事機密の壁は厚いわ。
しかし……自他ともに認める世界最強の海軍を誇り、普段あれほど自己主張が激しい国民性のアメリカさんが謙遜するときこそアヤシイ。
デイリー中佐との記者会見後艦内を案内されたが、艦橋は最新式の民間船とさほど変わらない。居室も観光船のようなクッションの効いた椅子がずらり40席ほど並ぶ。窓も自律航行中も人の目で確認するためか、一応あるが分厚い防弾ガラスのようであった。第一米軍がカメラの持ち込みも撮影も認めたのである。軍艦には必ずある軍事機密が詰まったCIC(戦闘指揮所)や甲板の怪しげなコンテナやレーダー室などは当然公開されなかった。
なお米軍が公表した資料のこの「レンジャー」の性能の最後には乗組員数が「オプション」とあった。しかし艦内を案内してくれたドロンズビー上等兵曹によれば、乗員は16名ということであった。そのうち海軍軍人が6名、さらにそのうちオフィサー(士官)はたった1名だけという。そして、われわれに許された質問の最後は不肖・宮嶋が尋ねる名誉に恵まれた。
「16名のクルー(乗員)というのは米海軍の艦艇では少ないほうか?」
「UNMANNED(無人)と銘打った船で16名は多すぎるぜ」
デーブ・スペクター並みのアメリカンジョークで応えてくれたドロンズビー上等兵曹であった。
写真=宮嶋茂樹
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