21歳で朝ドラ主演→次の作品が決まらず…

 同作は、比嘉演じる夏美が婚約者の実家である岩手県の老舗旅館に飛び込み、女将を目指して奮闘する物語。都会育ちの夏美は旅館の厳しい掟やしきたりに慣れず、周囲の反発を買い、時にはライバルの妨害に遭いながらも、持ち前の明るさと粘り強さでひたむきに努力して少しずつ信頼を得ていく。

 まさに王道の朝ドラであり、ドラマ初出演で夏美と同様に“新人”である比嘉の混じり気ない素直な演技が物語にぴたりとハマっていた。

 2019年には『なつぞら』(NHK総合)で12年ぶりの朝ドラ出演を果たし、広瀬すず演じる主人公を導く役どころを担った比嘉。良い意味でフレッシュさが抜け、洗練されたオーラで観る者を圧倒した。旧ヒロインの帰還とその成長ぶりに朝ドラ視聴者は感慨深い気持ちにさせられたことだろう。

ADVERTISEMENT

 朝ドラでヒロインを務めた女優には直後からオファーが殺到することが多いが、比嘉の場合はすぐに次の作品が決まらなかった。それは事務所の戦略もあったが、本人は不安を感じたそうだ(※2)。

比嘉愛未(『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』公式Xより)

 そんな比嘉にとって転機となったのが、朝ドラ終了から約1年後に出演した連ドラ『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(フジテレビ系)だ。

 同作はドクターヘリに携わる医療従事者たちの活躍と成長を描いた医療ドラマで、比嘉の他に山下智久、新垣結衣、戸田恵梨香、浅利陽介がメインキャストとして出演。シーズン3にわたって放送され、劇場版も制作されたこの作品で比嘉は一躍人気女優の仲間入りを果たすことになる。

 比嘉が演じたのは、5人の中で唯一のフライトナースである冴島はるか。代々医師の家系に生まれ、自身もまた医師を目指していたが、医学部受験に失敗して看護師の道へ。

 そのコンプレックスがフェロードクターたちとの間でハレーションを起こしていたが、数々の医療現場で彼らとの絆を深め、また難病を患う恋人との死別を経て少しずつ棘が抜けていく。常に冷静沈着で感情が読みにくいキャラクターでありながらも、言葉の節々や佇まいから人間味が滲み出る比嘉の演技が印象的だった。