大坂の市場システムを確立した商人の知恵と欲

天下の値段 享保のデリバティブ

 そこで吉宗は、江戸の商人たちを堂島に送り込み、米価の決定権を江戸に取り戻そうと画策する。しかし何度試みても失敗してしまう。その理由は、大坂の市場システムを確立した商人の知恵と欲にあった。

「大坂商人の数字操作は本当に上手いんですね(笑)。そもそも金銭欲というのは個人的なもので、誰もが当たり前に持っている心でありながら、たくさん集まると、ある瞬間から公的な機能になる。このメカニズムの不思議さをどこまで描けたかは、読者の評価を待つしかないですけれども、天下の値段が決まる核心に迫れたのではないでしょうか」

“令和の米騒動”が大きなニュースとなった中での刊行は、「偶然でありつつ、必然でもある」と話す。

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「日本の経済の中心はお米であったし、今も我々はその名残りの中に生きています。そのことが、この本と現代のニュースを見ると、社会の仕組みとしてさらによく分かっていただけるのではないでしょうか」

かどいよしのぶ 1971年生まれ。2003年「キッドナッパーズ」でオール讀物推理小説新人賞を受賞してデビュー。18年に『銀河鉄道の父』で直木賞受賞。近著に『札幌誕生』。

『オール讀物2025年9・10月号』より) 

天下の値段 享保のデリバティブ

門井 慶喜

文藝春秋

2025年8月7日 発売

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