髪は白髪混じり、シワを隠せない見た目はどう見ても60歳以上。新宿歌舞伎町で「立ちんぼ」を続ける久美さん(仮名、年齢不詳)の存在は、一見するとホームレスのようにも見える。しかし彼女は大久保公園外周で春を売る仕事を続けている。
ノンフィクションライターの高木瑞穂氏の新刊『ルポ 新宿歌舞伎町 路上売春』(鉄人社)のダイジェスト版から、意外な人生を歩んできた路上売春婦の素顔に迫る。
3000円でカラダを売る「ある老女の人生」
大久保公園の周囲で小さくうずくまる姿は、一見すると立ちんぼには見えない。しかし声をかけると「えっ、はい、ホテルですか?」と満面の笑みを浮かべ、わずか3000円でのサービスを提案してくる。
ホテルに入った久美さんは、「先にお湯をためてきますね」と風呂場に向かい、着衣を脱ぎ始めた。「いつもはマニュアルにあるように客の体を洗ってあげている」と語る姿からは、単なる路上売春婦ではない経歴が垣間見える。
彼女の半生は想像を超えるものだった。大阪生まれの久美さんは20歳で結婚し一女に恵まれたが、夫のギャンブル狂いと浮気を理由に24歳で離婚。女手一つで娘を育てるため若い女性専門のファッションヘルスで働き始めた。
「で、30歳くらいで泉の広場で立ちんぼをするようになりました。店も客も若い子のほうがいいから、ほら、いつまでも雇ってくれないでしょう」と久美さんは語る。大阪・梅田の地下街にある泉の広場は、2021年に一斉摘発があるまで有名な街娼スポットだった。
現在の歌舞伎町の街娼事情は変化している。以前は20代半ばから30代のキャバ嬢や風俗嬢が中心だったが、2022年夏以降、10代後半から20代前半の若い女性たちが増えているという。平日で15人から20人、週末ともなれば30人以上が散見される状況だ。
そんな「好景気」の中で、見た目からして高齢の久美さんはどのように客を獲得しているのか。周囲と異なるスタイルで客待ちする姿が注目を集め、時には同情を誘い、新規客や常連客を獲得して生活を続けているのだ。
年齢を聞かれても「50代前半」と答え、さらに追及されても「本当はもう少し上」と久美さんははぐらかした。
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