AIが演劇を変えるなら?

 野田 一方で最近のAIとかの進み方は、自分たちがそうやって頑張っている気持ちを超えているような気もする。そのぐらい予測不可能なことが起きているよな、とは思うんです。

 成田 今ここではAIによる脚本でしょうが、その先にはAI搭載のヒューマノイド(人型ロボット)が待ち受けてますよね。PC、スマホの次の汎用日常計算機として。

 ヒューマノイドのルネッサンスが始まりつつあって、中国とかアメリカのヒューマノイド系スタートアップは1社で1000億円みたいな資金調達をするのが当たり前になってます。数百兆円規模の超巨大市場が夜明け前だと思われてるっていうことですね。

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 人間の色々な単純労働・家事全般を手広く代わりにやってくれるロボットが、20年以内に今のPC・スマホ並みに浸透してもおかしくないという市場予測になってます。

 野田 それは例えば「ここに5人の人がいますが、実はこのうちの1人はロボットです」というくらい見分けがつかないレベルですか?

 成田 いや、その段階ではないですね。あくまで作業の代替で、外見の代替ではないです。見た目は明らかにロボットだけど、掃除洗濯とか農作業みたいな人がやってる作業を幅広く代替するロボットは近々できるかもという感じですよね。

 野田 じゃあ、皮膚が人間と見分けつかない、とかではない。

 成田 ではないです。石黒浩さん(大阪大学教授)とかが作っているような、見た目まで含めた人間存在を模した擬人ロボットではないですね。

 野田 なるほど。

 成田 ただ、見た目がロボットだったとしても、ロボットによる芝居や演技もただの実験や遊びを超えた存在感を持ちはじめそうです。

 野田 それはきっと、物珍しくてまずは見るような気もする。

 成田 最初はそうですね。そして問われるのは、ロボットではない人間の芝居とは何か?だと思うんです。人間の芝居の限界や欠陥と言ってもいいんですが。

 野田 やっぱり身体を持っていることが限界ですよね。年老いることもそうだし、長期間の公演で疲れちゃったりだとか。でも、それゆえに面白いこともあるんです。

(構成 伊藤秀倫)

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