同校の声明は、強い言葉でAさんの告発を否定するものだった。声明文には以下のような一文も含まれている。

〈今般貴誌からこの件についてお問い合わせをいただいたこともあり、当時在職していたコーチら、当時の外部トレーナー及び連絡をとることができる当時の部員らに再度確認を行いましたが、上記のとおり当時把握した事実経過に間違いありません〉

 あらためて記事掲載までの経緯を振り返ると、「週刊文春」が広陵に質問状を送付したのは8月9日のこと。その翌日、同校が夏の甲子園からの辞退を発表。そして同月12日、代理人弁護士を通じて、同校からの回答があった。

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中井哲之監督 ©︎時事通信社

当事者であるAさんには一切問い合わせず

 その後、「週刊文春」はAさんの父や当時を知る教員らに追加取材を重ね、同月16日に記事を公開。広陵は即座に「声明」を発表して火消しを図ったが、この間、当事者であるAさんらには一切の問い合わせがなかったという。

「広陵野球部の隠蔽体質を象徴するかのような声明文でした。近しい人たちの間で口裏を合わせ、暴力事件は『なかったこと』として処理されるんです。でも、2015年のケースは僕が被害者なわけだから、僕に一切問い合わせもしないで、周りのスタッフの証言から『暴力はなかった』と断言するのは、明らかにおかしい。僕としては、告発記事が出た直後に完全否定されたことで、自分が嘘つき呼ばわりされた気分だった。そこで今回、僕が入院した時の診断書をお見せすることにしたのです」(Aさん)