キャスティングについて聞かれた関根監督はこう答えた。

「武田さんが一番最初に決まりました。大変な撮影になると思ったので、とにかく一番にタフな人と思いました。彼女は空手もやっていますし。実際、撮影中は寝る間もなくて、平均睡眠時間は大体2時間、3時間でやっていましたからね。お坊さん役は、チベットには俳優がほとんどいないので、探していたら、台湾のモー・ズーイーさんを見つけました。彼も仏教徒ですし、3ヶ月ぐらい台湾のお寺に通ってお経を勉強し、日本語、チベット語、英語も勉強してくれました」

タシ役のモー・ズーイー ©Samden Films Production

 ここで、この日会場に来られなかったモー・ズーイーさんからの手紙を武田さんが読み上げた。

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「この映画の撮影は私にとって非常に特別な旅であり、台湾の俳優としてこの映画に参加できたことは大変光栄です。日本が大好きで、監督やチームのおかげでインド、ダージリンや静岡で素晴らしい時間を過ごしました。大阪アジアン映画祭にも感謝し、この美しい映画を皆さんが楽しんでいただけることを願っています」

©OAFF EXPO2025-OAFF2026

女性と触れてはいけない修道僧と愛を交わすシーン

 来日し富士市の寺にやってきたタシは、武田さん演じるエミと出会う。実はエミはある事件を起こして仮釈放中の身。同居する祖父(火野正平)との折り合いも悪く、様々な問題を抱えていた。タシとエミは次第に惹かれ合うが、修道僧タシには女性に触れることすらも禁じられた厳しい戒律があった。そんな2人がついに愛を交わすシーンについて、武田さんはこう語った。

エミの祖父を演じる火野正平(左)は本作が遺作となった ©Samden Films Production