「あのシーンは、女性に触れてはいけないというタシの思いが、すごく映像にも現れていると思います。どちらかというと、エミの方からタシの体に触れていって、キスをしかける。そこに引っ張られて感情を高ぶらせていくタシという流れがあって、この映画の中でも私はすごく好きなシーンです。撮影ではあのシーンは本当に一番緊張感がありました。愛しさと苦しさがすごくあったシーンだったので、終わった後は2人とももう言葉が出ないぐらいでした。
モー・ズーイーさんは、日本語もすごく勉強してくださっていた。日本での撮影なので私がサポートしなきゃいけない立場だったんですけど、役柄的にあまり余裕がなくて、人と喋れない時間もあったんですね。そういう時も、彼がいつもホテルの部屋のドアのところに『今日もお疲れ様でした。明日も頑張ってね』ってメモとジュースを置いてくれたりして、むしろ私の方がすごく支えられていました。モー・ズーイーさん、タシという存在は、この撮影において私にはお守りのような特別な存在でした」
この映画の旅は長く続いていく
エミに対する愛情を自覚したタシは葛藤する。愛を秘したまま修道僧として生きるのか、それとも――。武田さんは最後にこう語った。
「撮影はだいぶ前、コロナ禍の前に撮っていた作品なんですが、今日こうして観ると、いま様々な問題を抱えている世の中に通じるものがあると感じました。撮影から今日まで、そしてこれからも、この映画の旅は長く続いていくと思います。もしこの作品に皆さんにとっての希望だったり心に響くものがあったら、ぜひ広めていただいて、多くの皆さんと旅を一緒にできたら嬉しいです」
『シャンバラストーリー』
STAFF&CAST
監督:関根俊夫/出演:モー・ズーイー、武田梨奈、火野正平/2025年/日本・アメリカ・インド/108分/©Sameden Films Production
