殺人、死体遺棄、及び亘理町で物品を盗んだ窃盗の罪で起訴されたYは20歳の成人(当時)を迎えた2012年から仙台地裁で裁判にかけられる。被告、検察、弁護側ともに犯罪の事実確認は一致し、争点は事件を起こすまでの動機に絞られた。検察側は、これまでYが何度か恵美さんに殺意を抱いていたことや、犯行時に彼女が命乞いをしたにもかかわらず首を絞め続けた点を指摘。募らせた怒りを抑えきれなくなり突発的に殺害に及んだと主張した。

 また、恵美さんの父親が寄せた陳述書を紹介し、〈被告人が娘から逃れられなかったとは考えられない。被告人にも娘と付き合うメリットがあったのではないか。娘を男の腕力で殺害した罪を許すことはできない。最大限の罰を望みます〉と、その内容を読み上げたうえで、「被害者の助けを意に介さず、微動だにしなくなるまで首を絞め続けた強固な殺意に基づく悪質な犯罪」「犯行後すぐに新しい女性と交際したり、恵美さんが残した金を躊躇なく使うなど、反省や謝罪の気持ちがあれば、このような生活はできない」と断罪し、懲役10年を求刑する。

写真はイメージ ©getty

 対して、弁護側は「被告人は事実上、監禁状態に置かれ心身耗弱に近い状態だった」と主張、19歳という未熟さが招いた犯行であり教育改善のためにも懲役5年以下が相当と減刑を求めた。

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「殺人という選択肢しか残っていなかったという理解もできる」

 2012年7月9日、地裁が下した判決は懲役8年。裁判長は「被告人が過酷な同居生活を送っていた」と認定、「八方塞がりの絶望的な状況だった」としたうえで「犯行は家族を侮辱され、自宅で飲んだ水を吐き出すように強要され、積もりに積もった怒りが爆発したもので、殺人という選択肢しか残っていなかったという理解もできる」「ただし、殺人という行為は重大で、刑を酌量するにも限界がある」と異例とも言うべき判決理由を説明した。