「1人でやった。些細なことで罵声を浴びせられ、我慢の限界を越えたため手にかけてしまった。申し訳ないことをした」
平成23年、DVや窃盗の命令など恋人によるさまざまな嫌がらせに苦しんだ19歳の男性。やがて彼は彼女を殺害し、70万円を奪って逃亡した。そんな彼を裁判長はなぜ同情したのか? 彼女の恐るべきDV内容とは? 我が子を無惨に殺された親、学生時代ひどいイジメに遭った者などが仕返しを果たした国内外の事件を取り上げた新刊『世界で起きた戦慄の復讐劇35』(鉄人社)から一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)
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「私が悪かった。助けて……」
2011年7月18日、2人は都内から宮城県へ車を走らせる。柴田町の温泉施設に立ち寄り、21日には蔵王町にあるYの実家へ。深夜、Yが自室で水を飲もうとしたところ、恵美さんは「飲んだものを吐け」と命じてきた。この言葉に、これまでかろうじて保っていた糸がぷつんと切れ、Yは彼女の首に手を回し、思いきり絞めつけた。
その行為が本気だと悟った恵美さんは意識が遠のいていくなかで「私が悪かった。助けて……」と声を発したが、絞める力が弱まることはなくそのまま窒息死。この間、家族は就寝中だったため、一切気づかなかったようだ。
7月22日午前4時ごろ、Yは冷たくなった彼女を車に乗せ蔵王町の山林に運搬、自宅から持ってきたスコップで穴を掘り遺体を投棄。このとき、彼は恵美さんの服に自身の名前が入っていることに気づき、身元が特定されることを恐れて彼女の着衣を全て脱がせている。
全ての処理を終えたYはその後、車で東京へ。何事もなかったかのように出会い系サイトで知り合った新たな女性と肉体関係を結び、恵美さんから奪った現金約70万円も使い切った。が、遺体が発見されたことにより、彼女の交友関係を捜査した警察がYを重要参考人として事情聴取。彼は「1人でやった。些細なことで罵声を浴びせられ、我慢の限界を越えたため手にかけてしまった。申し訳ないことをした」と供述した。その後、Yの自宅から恵美さんの衣類や携帯電話が見つかったことなどから逮捕に至る。
